なぜ野菜果物ジュースの常飲は危険なのか

栄養素の不足を補うため、野菜や果物のジュースを毎日飲んでいる人も多いだろう。

しかしそれは本当に体に良いものだろうか。

スーパーマーケットに並ぶスクリューキャップ付きのジュースパック
写真=iStock.com/tavan amonratanasareegul
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「×種類の野菜が取れる」「1日分のビタミンがとれる」などと謳っている商品があるが、必ずしもその栄養素がきちんと吸収され、体に良い効果を発揮するとは限らない。

理由は大きく2つある。1つ目は、製造工程で栄養素が減る可能性や、重要な栄養素が壊れてしまうこと。2つ目は、栄養素の破壊によって糖分の吸収効率が高まり、飲めば飲むほど糖尿病などの発症リスクを高めてしまうことだ。

生活習慣病の患者をきちんと指導する医師ほど、野菜果物ジュースを常飲する危険性を指摘する。すでに病を発症する人だけでなく、健康な人にも勧められない。私自身も食に関する取材を多くしてきて同じ考えをもっている。

もし体にいいから、健康を維持したいからという理由で野菜や果物ジュースを日常的に飲んでいるのであれば、その危険性を知り、頻繁に飲む必要があるのか見直してほしい。

もちろん野菜や果物そのものは健康に良い

もちろん、野菜や果物そのものには健康に良い効果がたくさんある。昭和大学医学部の山岸昌一教授が説明する。

「野菜の中でも、ネギ類や葉物野菜、ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜を習慣的に食べている人はそうでない人に比べて、心臓病になりにくい、寿命が長いというデータは山のようにあります。果物にも、食物繊維が豊富に含まれていて、これらは腸内環境を整え、糖分の吸収をゆるやかにしたり、コレステロールの吸収を抑制したりします。糖分の吸収が和らぐと血糖値の急激な上昇が避けられるため、糖尿病の予防や血管の老化が抑えられるのです。実際、定期的に果物を食べている人では心血管病、大腸がん、うつ病などのリスクが低くなることが報告されています」

昭和大学医学部の山岸昌一教授
昭和大学医学部の山岸昌一教授

世界五大医学誌の一つ『BMJ』では2014年、83万人を対象に26年間も追跡した大規模な研究結果が発表された。それによると一日に食べる野菜と果物が一品増えるごとに死亡のリスクが6%ずつ下がるという。

また、果物にはビタミンCも多く、シミのもとになるメラニン色素の合成を抑制するなど、美肌にも貢献することが知られている。