特に「天日干し」は避けたほうがいい

魚は身体にいいからと、冷凍庫に干物を入れておく。忙しい時など、それを解凍して焼いて食べる。

健康にも良さそうな方法ではあるが、実は「干物」は健康や美容の敵であることをご存知だろうか。

サバ干物
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです

管理栄養士で老舗料亭「菊乃井」常務取締役の堀知佐子氏がこう説明する。

管理栄養士で老舗料亭「菊乃井」常務取締役の堀知佐子氏
管理栄養士で老舗料亭「菊乃井」常務取締役の堀知佐子氏

「特に『天日干し』は避けたほうがいいでしょう。室内で空気を循環させて水分蒸発を促す『乾燥法』ならまだしも、天日干しでは魚の脂肪酸が紫外線によって酸化されてしまいます。その上、冷凍で保管では冷凍焼け(冷凍庫内で食材が乾燥・酸化すること)も起こすでしょう」

酸化とは「体がサビること」といわれる。例えば食べすぎ飲みすぎ、強いストレス、加齢による代謝異常などで活性酸素が大量に発生し、それが蓄積されると正常な細胞や遺伝子を傷つける。体内には活性酸素の害を防御するシステムがあるものの、あまりにも活性酸素が発生すると処理が追いつかなかったり、また年齢とともに活性酸素を処理する働きが低下していく。だから「抗酸化作用のある野菜や果物を食べましょう」とよくいわれるのだが、干物のような酸化したものを食べることはその真逆の行為だ。

製法や保存方法によって酸化の度合いは異なる

健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏は「天日乾燥は温度、酸素、紫外線によって酸化が進み、加工後にも酸化が進む」と指摘する。

「製法や保存方法によって酸化の度合いは異なりますが、一例として図Aは干物にした後の酸化具合の変化です。昔ながらの灰干製法(魚を特殊なフィルムに包み、火山灰の中で魚の水分を取る干物の製法)で干物を作れば脂肪酸の酸化が進みにくいといわれるものの、それでも本来、健康や美容に良い作用があるはずのオメガ3の酸化を完全に防ぐことができず、体に悪影響をおよぼします」

「乾燥法によるあじ開き干しの成分変化の相違」千葉本試研報、NO. 56,85-89,(2001)より
乾燥法によるあじ開き干しの成分変化の相違」千葉本試研報、NO. 56,85-89,(2001)より

オメガ3は、魚の「脂肪」に多く含まれる。さまざまな種類があるが、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(イコサペンタエン酸)については世界中で膨大な数の研究報告があり、老化予防の効果が特に強いとされる。

大まかにDHAは脳を活性化し、眼や髪の老化を防ぎ、EPAは血液を固まりにくくする作用があるため、血栓を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞を予防する。