オメガ3が細胞を傷つける過酸化脂質に変わる
東邦大学名誉教授で平成横浜病院の東丸貴信医師もこう補足する。
「高血圧や加齢に伴って心臓の筋肉組織は硬くなっていきますが、心筋細胞や筋肉組織の働きをオメガ3が再び活性化させる作用があります。何らかの原因で血管に炎症が起きた場合も鎮める働きがあります。特に青魚は悪玉コレステロールの値を下げて、動脈硬化を予防するEPAを多く含むので積極的に取りたいですね」
オメガ3は体内では作れず、食品から摂る必要があり、エゴマ油、アマニ油でも摂取できるが、魚で摂るのが圧倒的に効率がいい。例えばDHAが豊富な魚はクロマグロ、サンマ、ブリ、太刀魚、ニジマス、銀鮭、ウナギなどで、EPAを多く含むものはサンマ、クロマグロ、カタクチイワシ、太刀魚、ブリ、ニシンなどが挙げられる。
しかし、欠点としてオメガ3は非常に酸化しやすい。だから干物に含まれるオメガ3は、その作用が失われているといっていい。
「さらには体に良かったはずのオメガ3(DHAやEPA)が細胞を傷つける過酸化脂質に変わってしまうのです。今年3月、米国科学雑誌Current Biologyに過酸化脂質の蓄積が細胞死を起こす新たな仕組みが掲載されましたが、酸化した食品を食べ、それが蓄積されると、腸管組織を傷つけたり、動脈硬化などのリスクも高めてしまうことがわかりました。アジ、イワシ、ししゃもの酸化度を実態調査した研究では、イワシの酸化が著しく高いという結果。イワシに一価不飽和脂肪酸が多いためと考えられます」(望月氏)
ただしクサヤは干物にしたほうが良い
一価不飽和脂肪酸(オメガ9)とは、オリーブオイルにも多く含まれる良質の油で、血液中の悪玉コレステロールを下げる働きがあるといわれている。しかし実際は、同列に研究されていないだけで、イワシ以上に、前述したDHAやEPAが豊富なクロマグロやサンマなどのほうが酸化されている危険が高い。オメガ9よりオメガ3のほうが酸化しやすいからだ。ただし一つだけ例外がある。
「伊豆七島で親しまれている独特の干物、クサヤは干物にしたほうが良いんです。以前の食品分析では、天日で干すため過酸化脂質含有量の多い食品として知られていました。ですがクサヤ摂取者に対して意外と動脈硬化性疾患の報告が少ないことから、2001年にクサヤ・パラドックスとして調査が行われたのです。するとクサヤの生と焼いた状態では、過酸化脂質の量が大幅に違うことがわかりました」(望月氏)
クサヤは、生の状態では過酸化脂質は356μmolであったが、焼くことで49・8μmolに下がることが調査でわかっている。
「クサヤ菌に24時間漬けることで発酵が生じるので、その影響と考えられています。通常の干物は製造過程で過酸化脂質を生じさせ、動脈硬化や老化を促進するとされています」(望月氏)