戒名代は「院殿大居士」なら推定500万円

複数の葬祭業のホームページをみると、宗派・ランク別の戒名が書かれ、「戒名代」の目安が記されている。あるサイトだと、「居士・大姉の目安が30万〜80万円」「院居士・院大姉の目安が100万円〜」とある。

また別の寺のサイトでは「院号居士が推定60万円」「院号大居士が推定200万円」「院殿大居士が推定500万円」などとある。

これらをみると、戒名がグレードごとに「販売」されている実態がよくわかる。しかし、「目安」や「万円〜」「推定」などが添えられているのをみても、戒名料には明確な基準がないことがわかる。

庶民に「院殿大居士」などの戒名が付けられたとしても、あまりにアンバランスだ。だが、カネさえ払えばそうした位の高い戒名が得られているのが現状である。

住職のほうから、「先祖代々の戒名には院・居士がついているから、今回も同等の戒名を付ける。その際のお布施は○○万円」などと、半ば強制的にグレードの高い戒名を要求するケースもあると聞く。半世紀ほど前であれば、高位の戒名がもらえることは名誉であったかもしれないが、現代では戒名にこだわらない人のほうが多いのではないか。

なぜ、戒名が切り売りされているのか。

理由のひとつに、かつてバブル期に芸能人の戒名が高額で取引きされ、その金額が報じられたことで、「戒名の販売」が一般化したことが挙げられる。

タレントが亡くなった際に、芸能プロダクション側が「戒名料は高くてもよいので、最高ランクの戒名を付けてほしい」などと大寺院に申し出るケースだ。あるいは、著名人や政治家の死亡時に、寺院側が“忖度そんたく”して過剰に高い位の戒名を付けてしまうケースもある。

ここで、あえて言いたい。戒名は、販売対象では決してないということ。ネットなどで戒名の料金を明示することも、やってはいけないことだ。

なぜなら「院」や「居士」は、信仰に篤く特別な儀式を受けた信者や、長きにわたって寺を護持してきた檀家に対して付けられるものであるからだ。したがって、菩提寺と関係性のない者にたいして、「戒名を売る」という行為自体が間違っている。住職も仮に檀信徒から高位の戒名を頼まれたとしても、多額の布施と引き換え、ということは慎むべきだ。

それに、院号居士がついた戒名だからといって、「死後の扱い」が優遇されるわけでもあるまい。

著名人への「戒名販売」が、なし崩し的に庶民の世界に広がり、恒常化していった面は否めない。戒名自体は必要なものかもしれないが、戒名に「差」を付けたことで弊害が生まれた。平等や寛容、慈悲をとなえる仏教にあって、仏法と矛盾した戒名の階級をなくすことを、検討する時機にきているのではないか。