安倍元首相は将軍並の「紫雲院殿政誉清浄晋寿大居士」

近年では、非業の死を遂げた安倍晋三元首相は「紫雲院殿政誉清浄晋寿大居士」と付けられた。いまは武家社会ではないので、「院殿」は用いられないのが本来だ。だが、安倍氏に与えられた位階が「従一位」であったことで、「将軍並み」の戒名になったのかもしれない。

元都知事で2022年2月に亡くなった石原慎太郎元都知事(位階は正三位)の戒名は、「海陽院文政慎栄居士」だ。「院殿」は付いていないが、海と太陽をイメージし、さらに文学と政治の要素が盛り込まれた石原氏らしい戒名といえる。

著名人の戒名は、石原氏のような「○○院○○○○居士(女性の場合は大姉)」のパターンが多い。昭和に活躍した著名人の例を挙げてみよう(敬称略)。

石原裕次郎「陽光院天真寛裕大居士」
美空ひばり「茲唱院美空日和清大姉」
坂本九「天真院九心玄聲居士」

著名人の中にはユニークな戒名もある。

大島渚氏は「大喝無量居士」。大島氏はかつて、テレビ討論番組で「バカヤロー」などと、大声で相手を叱責することが少なくなかった。作家の野坂昭如氏とパーティーの席上で殴り合いの喧嘩をしたことも、よく知られたエピソードだ。大島氏とやりあった野坂氏のほうは「戒名などいらない」とし、付けられていない。

遺言によって戒名を拒否したのは、ほかにも作家の白洲次郎氏、俳優の渥美清氏らがいる。

黒い机の上に、菊の花、数珠、香典が載っている
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落語家の立川談志氏は生前に自ら、戒名を付けていた。「立川雲黒斎家元勝手居士」。読み方は「たてかわ・うんこくさい・いえもと・かって・こじ」。「うんこくさい」との、自虐的な戒名は一見、掟破りで異色の戒名のように思えるが、割と多い。

しかしながら、通常は戒名に用いられる字は、経典の中の言葉や、花鳥風月を連想するもの、故人の趣味や性格、さらには俗名などから、バランスよく選ばれるべきである。したがって、住職には言葉選びのセンスが問われることはもちろん、生前戒名の場合には本人、あるいは遺族には「その戒名を付けた意味」を説明する義務がある。

その上で「戒名料」を取るのは、是か非か、を論じたい。