5年前の高校球児は4人中3人が丸刈りだったが、今は4人に1人しかいない。急速に減っているが、甲子園大会を見ると、まだその多くは丸刈りだ。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「最近は僧侶も有髪スタイルが増えつつあるが、実はもともとどの宗派も丸刈りや剃髪を強制していないのに、そうせざるを得ない要因があった。野球界と仏教界の頭髪の問題にはいくつかの共通項がある」という――。
丸刈りの頭
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高校球児の丸刈り急減でも、丸刈り強要する人の言い分

これまで高校球児の象徴であった丸刈りが、急激に減ってきているという。保守的な高校野球の世界がようやく、社会の趨勢に対応し始めたのだろう。同じく伝統的な世界でいえば、丸刈りがシンボルになっている仏教僧侶にも変化の兆しがある。有髪(丸刈りや剃髪にしないこと)のままで活動する僧侶が一定数おり、今後はその割合が増えていくと考えられる。野球界と仏教界の頭髪の問題には、いくつかの共通項がある。

各界で「伝統」や「らしさ」を求める精神論が崩れつつある。日本高校野球連盟と朝日新聞社は6月19日、硬式野球部がある全国の加盟3818校を対象にして、「部員の頭髪の取り決め」(2023年版)の調査結果を発表した(各校の監督や責任教師が回答)。それによると「丸刈り」と回答した割合が2013年では79.4%、2018年では76.8%だったのが、今回調査では26.4%とここ5年で激減した。今年の夏の甲子園は、高校球児の頭にも注目してみたい。

高校球児の丸刈りの強制は、かつて戦時下に遡る。国家主義体制のなかで、兵士と同様の心構えが求められ、「男児は坊主頭」とされてきた。“勝負”の世界である高校野球では、戦後になっても丸坊主の習慣が続き、それが次第に、「高校球児らしさ」として定着した。

しかし、近年は丸刈りを嫌がって野球部に入部しない高校生が増えてきた。また、教育現場や部活動でのパワハラや、「ブラック校則」が指摘される風潮にある。高校野球界は、否応なく変革を迫られた格好といえる。

高校サッカーや、高校ラグビーなどは丸刈りを強要されることは少ない。高校球児、あるいは他のスポーツ選手の頭髪の自由化は、異論を挟む余地はないように思える。