「女性僧侶」と「尼僧」は似て非なるもの
浄土宗や日蓮宗、真言宗では有髪の僧侶も少なくない。また、女性僧侶の多くは、有髪で活動している。ちなみに、「女性僧侶」と「尼僧」とは似て非なるものだ。
女性僧侶は多くは寺に生まれた子女で、男僧と同じ修行過程をこなし、僧侶資格を得て、自坊を継承するケースが多い。多くの宗派では修行時は、女性とて剃髪が義務付けられている。しかし、その後は髪を伸ばして、法務に就く。
他方、「尼僧」の世界は大きく異なる。純然たる尼僧は、次のように定義できる。
①尼僧専門の修行道場を出ていること②剃髪していること③未婚を貫くこと④代々続く尼寺に入っていること――などが尼僧の条件だ。しかし、これらも明文化されたものではなく、各宗派の尼僧団体の不文律として守られてきている。
例えば、作家の故瀬戸内寂聴さんは、上記の条件にすべて当てはまらないが、尼僧のカテゴリーに入れることができるだろう。世に言う「出家」の、本来あるべき姿が尼僧の世界には根強く残っていると言える。それは「尼僧の矜持」に他ならない。
以前、ある高齢の尼僧を取材した時の話が印象に残っている。
「今、女性で僧侶になろうとする人の多くは、修行を終えて道場の門を出るや、カツラや帽子を被って街に消えていく。私たち尼僧にしてみれば、忸怩たる思いになります。私が尼僧になろうとしていた戦後しばらくの時期は、寺に入った養女が丸坊主で、セーラー服を着て学校に通っていました。覚悟がありました」
しかし、尼僧の世界は高齢も進み、その数は激減している。
話を戻そう。女性僧侶の割合は浄土真宗(浄土真宗本願寺派、真宗大谷派)が約15%。浄土宗や日蓮宗、真言宗が10%前後となっている。禅宗系は5%未満だ。
浄土系で女性僧侶の割合が高く、禅宗系で低いのは有髪で活動しやすい宗派環境かどうかが、少なからず影響していると思われる。継承問題が深刻な仏教界において、女性僧侶の登用と活躍が増えていかねば、仏教界の衰退は免れないだろう。