政府の方針と異なる研究には発注がこなくなる
また、連邦議会の専門委員会の調査でも、マックスプランク研究所の下で6つの独立した研究所が行った研究でも、再エネ法の矛盾が指摘され、その改正、あるいは廃止が進言されたが、政府はそれらを悉く無視した。
ゲッティンゲン大学のメディア研究者は、温暖化に関するほとんどの報道は、科学的に曖昧な部分が明確に示されていないと指摘している。問題は、政府の方針と異なる結果を出す研究には発注がこなくなることだ。こうして異端の意見は淘汰されていく。
送電ネットワークの運営者は、今でも口を揃えて、脱原発と脱石炭を同時に行うと電力供給が保障されないと警告しているが、それについての議論は行われず、シュルツェ環境相は小型の新世代型の原発など「御伽噺」だと切り捨て、国民は、いつ商業ベースに乗るのか見当もつかない水素が、もうすぐドイツの主要エネルギーになると信じている。
この迷走を日本人には他山の石としてもらいたい
付け加えれば、環境相は、発生したCO2を地下や海底に押し込むCCS技術も毛嫌いしており、水素は、純粋に再エネの電気で作ったグリーン水素以外は蹴っ飛ばすつもりだ。ドイツのエネルギー政策ではイデオロギーが一人歩きしている。日本人にはドイツで進行しているこれらのことを、是非とも他山の石としてもらいたい。
2023年現在、ウクライナ戦争のせいでロシアからのガスが途絶えたドイツでは、電力不足解消のため石炭ルネッサンスが起こっている。それどころか、これまで絶対にタブーだった褐炭の採掘までが復活。当然、CO2排出は急激に増えているが、CO2フリーの原発は4月15日で終了した。緑の党が与党になって以来、エネルギー政策の迷走にさらに拍車がかかっている。
ちなみにドイツの天気予報では、「明日は全国的に晴れのよいお天気」という表現が消えた。気候変動で旱魃が起こっているのだから、晴れがよいお天気であるはずはない! なんだか不思議な国である。