注目すべきは、この時、資金運用部が購入していた国債は政府発行国債の19%にすぎなかった点だ。

発行国債の大半を購入している今に比べれば、資金運用部の購入などかわいいものだった。しかも、その混乱の中でも、市場は、いざとなれば法を変えてまで、日本銀行が、最後の砦として長期国債市場に介入、爆買いをして市場を支えてくれるとの期待があった。

今はその最後の砦と期待されるはずの日銀自身が既に大半を買っているのだ。日銀がYCCをやめたら、どこまで長期金利は跳ね上がるのか? と考えるだけで背筋が凍る。

1%までで金利上昇が止まると考えるのは、へそが茶を沸かすくらいにおかしいと私は思っている。

「暴落はしない」という楽観論を鵜呑みにしてはいけない

2014年2月26日の参議院「国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会」で、内閣官房参与の藤井聡・京都大学教授がこう話していた。

「国債暴落が起こるか否かは、今国債を持っている人が投げ売りをするかどうかにすべて依存しているが、売れば自分で自分の首を絞めることになるからそういう人はいない。アンケート調査をして科学的に証明した」

私は唖然とした。「科学的に証明した??? So what?」と思ったものだ。

「そういうやつ(=筆者註:国債が暴落する可能性があると主張する人)で実際にお金を動かしている人は全然いないんですけれども、全然債券を動かしていないやつらにはいるんですよ、こういうやつらが。わかりますかね。(中略)そういうことで、よくそういうことが言われるのは、こういうような非金融資産の運用家たちがテレビや新聞で騒いでいるのではないかなと思います」(国会議事録より)

毎年、新発債が三十数兆円発行されている。誰かが毎年この分を買わねばならない。すなわち投げ売りをする人がいなくても三十数兆円を“買い増す”人がいなければ、国債の需給がくずれることを藤井先生は理解されていない。

それに過去のショックでは、真っ先に逃げ出したのは藤井先生がいうところの「自分の首を絞めることになるから売らないはず」の国債村の住人だったのだ。

専門が違ったり、実務経験がないと時々、とんでもないことを言いだす学者先生もいる。このことは決して忘れてはいけない。(筆者註:植田総裁は論文等を読む限り、至極まっとう、超優秀な学者だと僭越ながら思う。誤解なきよう)

暴落が始まったらパニックがパニックを呼ぶ

日銀がYCCをやめる時、流れに逆らって国債を買い向かう人はいるのか。

不動産市場で考えると分かりやすいだろう。一度値下がりを始めると、なかなか買い手が現れないものだ。

私は現役時代に「逆張りのフジマキ」と呼ばれていた。逆張りは自分の予想に絶対的な自信があり、かつ精神的に相当タフである必要がある。何度もマーケットで血反吐を吐いた経験が無いとできるものではない。