植田総裁にできることは「マイナス金利」の解除くらい

植田総裁にできることは何もないか、と言うとそうでもない。一つだけできることがある。マイナス金利の解除だ。

それは「金融緩和をやめた」とのアナウンス効果でしかなく、経済的には何の影響もない。付利の対象になる日銀当座預金は(1月16日~2月15日)491兆円。このうちのマイナス金利の対象は29兆円にすぎないからだ。ちなみにゼロ金利が適用されているのは255兆円、プラス金利が適用されているのは206兆円だ。

インフレ防止手段を持たない中央銀行などもはや中央銀行のていをなしていない。日本には中央銀行が存在しないと言っていい。

だから私は以前より、「日銀に代わる新しい中央銀行の創設準備をしなければならない」と主張してきた。それは現在流通する円が無価値になることを意味するため、ドルMMFなどのドル資産を持って自己防衛を図る必要がある。

名古屋大学の齊藤教授は、『金融経済研究』3月号の中で以下のように指摘している。

「こうした瞬時的で非連続的な変化を考察することについては、『そんなことは絶対に起きてほしくない』という人々の心理的な性向から往々にして思考停止に陥りがちになる」

よくこのお言葉の意味を考えていただきたい。日本円は本当に安全資産と言えるのか、紙くずになるなんてありえないことなのだろうか――。

思考停止に陥るべきではない。それが、自分の財産と、ご家族を守るための第一歩だと思っている。

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