2017年度、政府は新発債+借換債で141.3兆円発行し、日銀は96.2兆円を購入した。実に68%だ。この10年間、毎年60~90%も買っていることになる。この日銀の国債爆買いが、財政が極端に悪化しているのにもかかわらず、長期金利が超低位にとどまっている理由だ。

サンマであれ、お米であれ、どんなマーケットでも供給の大半を買い占めていた購入者が撤退すれば、値段は大暴落する。国債マーケットとて同じ。日銀がYCCを廃止し、長期国債の購入をやめれば国債価格は大暴落(=長期金利は暴騰)するのは自明だ。

過去の金融危機とは比べ物にならない

第三の理由は過去に起きた金融ショックだ。

私は現役時代、日本国債市場を揺るがしたロクイチ国債暴落(1980年)、タテホ・ショック(1987年)、資金運用部ショック(1998年)、またブラックマンデー(1987年)、バブル崩壊(1990年代前半)など、さまざまなショックを現場で経験し生き延びてきた人間だ。部下には「血反吐へどを3度吐かなければ優秀なトレーダーにはなれない」と言ってきたが、私自身、何度も血反吐を吐いてきた。

ロクイチ国債の暴落はディーラーになった直後に起きた。1979年1月に6%台後半だった表面利率6.1%の国債(通称ロクイチ国債)が1980年4月には12%超まで上昇(=価格は下落)した。価格で言えば100円の債券価格が70円台にまで下落したことになる。

1987年9月に起きたタテホ・ショックは、タテホ化学工業の国債先物取引での巨額損失の発覚に伴い発生した。5月に2%台だった金利が10月には6%台にまで上昇したのだ。1998年の資金運用部ショックは、当時の最大の国債の買い手である運用部が国債購入を中止すると発表したことによって起きた(詳細は後述)。

これらショックに比べれば、今回の来たるショックは段違いに大きいものだろう。それなのに10年金利が1%までの上昇で止まると、どうしてそう考えるのか不思議である。

日銀が国債の買い支えをやめるとどうなるのか

YCCを解除し、日銀が国債の買い支えをやめたら国債価格(あるいは利回り)はどうなるだろう。先述した資産運用部ショックを例にするとイメージしやすい。

資金運用部とは、郵便貯金や簡保等で集めた原資を運用していた大蔵省の機関(会計)(2001年に廃止)だが、1998年12月、宮澤喜一蔵相(当時)がその国債購入を中止すると発表した。資金繰りが厳しくなったからだ。

当時の国債の最大の購入者である資金運用部が購入を中止するということで、国債市場にショックが走った。

2.4%だった国債利回りが4カ月間で6%にまで急騰した。大蔵省は大慌てで「国債購入の中止」を中止した。すなわち国債購入を継続することにして事態を収拾させた。もし購入中止のままにしたら、軽く10%は超えたと私は思う。それほどの勢いでの金利上昇だった。