私たちの判断を狂わせ続ける「自己中心性バイアス」

どうして私たちはこうも的外れで、それでいて正確さに自信を持っているのか? その原因は、専門用語で「自己中心性バイアス」というものだ。心理学者のエプリーは、私たちは自分の視点にとらわれすぎているとして、次のように述べている。

「ほとんどの人は、他者が自分と同じように考え、信じ、感じている度合いを誇張する傾向にあることが、さまざまな調査でわかっている」

私たちは自分の頭のなかのストーリーにとらわれ過ぎている。研究結果によると、たとえ他者の視点に立とうとしても、精度は改善しない。自己中心性バイアスはいく分減るが、それに代わる解釈も、何ら改善しない。

他者に質問をすれば、精度は多少上がるが、それを十分行なうわけでもない。通常、私たちは自分の頭のなかで自作のストーリーを操り、間違った思い込みを別の間違った思い込みに置き換えているだけなのだ。

人の心を読む能力は「モチベーション」で高まる

それでも「ある要素」があれば、人の心を読む能力を高められるとわかっている。その要素とは「モチベーション」だ。

根本的な原因を探った数々の研究から、平均して、女性のほうが男性より人を正確に読み取ることに意欲的であることがわかった。ただ単に、女性のほうが関心が高く、熱心なのだ。

うれしそうな女性のビジネスチーム
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心理学者のジェフ・トーマスとグレゴリー・マイオによる2008年の研究は、この点を明確に示している。研究者が男性被験者たちに、共感性を高めると女性があなたに興味を持つようになりますよと伝えるとどうなったか? そう、男性たちのモチベーションが上がり、人の考えや感情を正確に認識する能力が上がった。

もちろん裏を返せば、モチベーションが下がれば、その能力も下がるということだ。不幸な結婚生活を送る夫たちは、妻の非言語的コミュニケーションより、無作為に選ばれた女性のそれのほうが正確に読み取れるのだという。