※本稿は、エリック・バーカー『残酷すぎる人間法則 9割まちがえる「対人関係のウソ」を科学する』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
大多数の人は相手の気持ちを読み取る能力が恐ろしく低い
あなたは人の心を読めるようになりたいだろうか? 周りの人たちが考えていることや感じていることを知りたい? もちろん、そうだろう。
そんな能力があったらいいと望むことは、けっしておかしなことじゃない。調査によると、少しでもこの能力に秀でていると、大きな力になる。
「人を正しく認識すること」は、個人的にも、対人的にも、さまざまなメリットにつながる。研究によれば、こうした能力の持ち主はより幸せで、物怖じせず、人づき合いがうまく、より親しい人間関係を築き、より良い賃金や勤務評価に恵まれる。もっと具体的に、仕草や非言語的コミュニケーション(表情、視線、身ぶりなど)の解釈に優れている人に着目した場合にも、同様のポジティブな効果が見られる。
ぜひそうなりたい? でも1つだけ問題がある。概して、私たちの大多数は、人の心を読み取る能力が恐ろしく低い。滑稽なほどお粗末なのだ。
相手の気持ちを理解しようとしても、正答率は20%にすぎない
シカゴ大学教授のニコラス・エプリーの著書によると、ビデオに出てくる人の考えや気持ちを察する実験をすると、見知らぬ人の場合、正答率は20%にすぎない(当てずっぽうの正答率は5%)。
もちろん、よく知る相手のほうが確率は上がるが、大差ない。親しい友人で30%。配偶者で最大35%ほどだ。学校の成績(A~F)で言えば「F(59点以下)」に相当し、実際には「G」に近いかもしれない。配偶者の頭のなかで何が起こっているのか理解しようとしても、3分の2は間違っているのだ。
だが、本当に滑稽なのはここからだ。私たちは、人の心を読むのが得意だと思っている。厄介な脳が、私たちを喜ばせるストーリーを語っているのだ。
人びとにパートナーの自尊感情を評価してもらうと、44%の確率で正しく理解している。しかし彼らは、自分の判断が82%の確率で正しいと自信を持っている。そして、相手といっしょにいる期間が長ければ長いほど、その自信は高くなる。正確さのほうは? そのままだ。時を経ても改善しない。自信のほうだけが、間違いなく高まっていくのだ。