相手のウソに騙されないためには、どうすればいいのだろうか。作家のエリック・バーカー氏は「人間はウソを見破るのが苦手で、成功率は平均で54%だ。このためウソ発見能力を高めることよりも、相手のウソをつく能力を低下させることに取り組んだほうがいい」という――。

※本稿は、エリック・バーカー『残酷すぎる人間法則 9割まちがえる「対人関係のウソ」を科学する』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

男とマスク
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人は平均して5回に1回の頻度で嘘をついている

ある調査で、555個の性格特性を順位づけするように言われた大学生たちは、「嘘つき」を最下位にした。これは面白い。なぜなら平均的な大学生は、会話の約3分の1で嘘をついているからだ。大人の場合は、5回に1回だ。プロフィールの81%が真実を逸脱しているというマッチング系のサイトの話は置いておこう。

嘘の大半は罪のないものだが、ハートフォードシャー大学のリチャード・ワイズマンによると、人は1日に2回、大嘘をついているという。誰にいちばんよく嘘をつくかというと、母親だ。配偶者への嘘は最も少ない(会話10回に1回の割合)が、最も大きな嘘をついているという。そして誰もが、1日に200回くらい嘘をつかれている(これはそのうちの1回ではないことを約束する)。

そのうえ、私たちは嘘を見破るのが苦手で、成功率は平均で54%だ。コイン投げと変わらない。警察にしても同じ程度だ。調査によると、彼ら自身は成功率がもっと高いと思っているのだが。なかには嘘を見抜く能力が高い人もいるが、同じようになりたくはないだろう――脳卒中を患い、前頭前野の左葉に深刻な損傷のある人びとだ。

15分訓練すれば、誰でもウソ発見器をくぐり抜けられる

人間は何千年にもわたって、嘘を見破る技を身につけようとしてきたが、無惨に失敗してきた。

1920年代に、心理学者のウィリアム・モールトン・マーストンを含む多数の人によって、最初の嘘発見器が開発された。マーストンは、のちにDCコミックスのキャラクター、「ワンダーウーマン」の生みの親となる人物だ。

だが、嘘発見器の有効性は怪しい。実際、米国科学アカデミーが次のように公式発表している。

「連邦政府は、スパイやその他国家安全保障上のリスクを特定する目的で職員候補者や現在の職員を審査する際、嘘発見器による検査に頼るべきではない。なぜなら、検査結果があまりにも不正確だからである」

15分も訓練すれば、誰でも検査をくぐり抜けられる。いちばん面白くて効果的な方法は、タイミング良く肛門を絞めることだ。

では、テレビでよく見る警察の取り調べはどうだろう?

その多くは「リード・テクニック」と呼ばれる尋問法だ。1940年代に開発され、ジョン・リードとフレッド・インバウによって1962年にマニュアルとして初めて公表された。容疑者にストレスをあたえて自白に追いこむ攻撃的なもので、“第三級(サードディグリー)”取り調べとも呼ばれる。

このリード・テクニックはよく効く。実のところ、あまりにも効きすぎる。問題は、容疑者が有罪であろうとなかろうと、大半の人から自白が得られることだろう。