機能3:同じ関心を持つ人との「創り合い」

仕事を一緒に行う他者とは、「教え合う」「真似し合う」という学習そのものだけではなく、知識や技術を共に「創造し合う」仲間でもあります。片方から片方への技術や知識の移転だけではなく、新たなスキルやノウハウ、ナレッジをともに創り上げていく過程においても、他者との学びは発揮されます。モノ作りでも共同研究でも、多くのイノベーションは孤独な個人のアイデアではなく、組織的な営為の中から創造されます。

この人々の自発的な共同実践を通じた創発性により注目したのが、ジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーが提唱した「実践共同体Community of Practice」という概念です。実践共同体は、同じ関心を共有している人々のコミュニティとしてともに知識を創り合い、学び合うものです。

機能4:他人の目標が影響を与える「高め合い」

他の人と関わることによって学ぶモチベーションや目指す目標が影響されることも、多くの研究が示してきています。

例えば、社会ネットワーク分析で有名な研究を紹介すれば、ハーバード大学の医師ニコラス・クリスタキスが、30年以上にわたる追跡調査の分析によって、友人や知人とのつながりが人の「肥満」に影響することを発見しました。友人が肥満になると、自分も肥満になりやすくなるということです。一見して、なぜ? と首をひねりたくなります。

この現象の背景には、太っている友人の食事を見て、自分もそれに影響されて食べすぎてしまったり、運動不足になってしまうことが指摘されています。私たちは、「どの程度食べても大丈夫か」「どのくらい運動するべきか」などを、一人で決めているわけではなく、周囲の他者から影響を受けながら決めています。そのように他人の目標や規範が、無意識に読み手の行動に影響を与えることを、心理学者のヘンク・アーツらは、「目標伝染」と呼んでいます。

この「他者を通じた動機付け」について、筆者の研究結果からも見てみましょう。

筆者と立教大学の中原淳教授との共同調査においても、働く人の学び直し意識には、組織内の上司・同僚からの継続的な学習支援だけでなく、「組織の外の他者」との交流もプラスに寄与していました。さらには、自社について他人に紹介したり話したりすることが多い人は、学び直し意識が高いということも分かっています。ここでも、人との交流範囲の広さや自社について他社の人と話す機会の多さが、その人の学びへのモチベーションとプラスの相関にあることを示しています。

【図表】学び直しの意識を高める他者との関係
出所=パーソル総合研究所・中原淳「転職に関する定量調査」