全国大会の増加は勝利至上主義を引き起こす

以上を踏まえて、この全国大会の増加が、部活とユーススポーツの競技性を高めて勝利至上主義を引き起こし、結果的に過熱化につながった可能性について問題提起したい。

全国大会を頂点とした競技システムでは、記録やパフォーマンスが競われ、日本一が決まるまで勝利が追求される。競技システムは、スポーツの競技性を高めたり、その競技性の高さを明示する機能を果たす。ここには勝利が至上価値となる構造がある。

そう考えると、全国大会が増加してきた戦後の歴史とは、部活を含めたユーススポーツの競技性が高まり、それが正当性を帯びて、勝利至上主義という価値観がじわじわと青少年世代に全国レベルで浸透していくプロセスでもあったのではないか。

と同時に、このプロセスは、単に競技性が高まっただけで終わらない。競技性が高まったことでそれに魅せられた人たちが参入し、競技人口がもっと増えて普及が進んだだろう。そして、普及が進むと多くの参加者が互いにさらに競い合い、全国大会の数もさらに増えていく、という循環もあったと考えられる。この循環が、部活とユーススポーツの全体を過熱化させていったのではないか。

大会を減らして部活の過熱化を抑制せよ

部活とユーススポーツの過熱化が問題視される今だからこそ、全国大会のあり方を見直し、適切に規制することが求められる。

昨年12月にスポーツ庁と文化庁がまとめた「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」では、「全国大会をはじめとする大会等の在り方」として、大会の主催者、中体連・学校設置者、校長・地域クラブ運営団体に、次のように求めている:

・[大会主催者]全国大会の開催回数について、生徒や保護者等の心身の負担が過重にならないようにするとともに、学校生活との適切な両立を前提として、種目・部門・分野ごとに適正な回数に精選する。

・[中体連・学校設置者]中学校の生徒が参加する大会等の全体像を把握し、週末等に開催される様々な大会等に参加することが、生徒や指導者の過度な負担とならないよう、大会等の統廃合等を主催者に要請するとともに、中学校の生徒が参加する大会数の上限の目安等を定める。

・[校長・地域クラブ運営団体]生徒の教育上の意義や、生徒や指導者の負担が過度とならないことを考慮して、参加する大会等を精査する。

(「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」から抜粋引用)

部活やユーススポーツのやり過ぎを是正する上で、多すぎる全国大会を減らす改革は避けては通れない。はたして、大会の主催者、中体連・学校設置者、校長・地域クラブ運営団体は、上記ガイドラインに沿って適切な規制を実施できるか。子どもを守る責任は大人にある。

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