なぜ全国大会は増えたのか

では、なぜ歴史的に全国大会は増えてきたのか。それは、国の規制が緩和されてきたことが関係している。

戦後、文部(科学)省は、対外競技基準と呼ばれるルールを作成して、大会のあり方を規制してきた。対外競技基準は、学校教育活動として実施される運動部活動の競技大会の範囲や数が過剰にならないよう抑制するために1948年に設けられた。特に全国大会の開催は、費用もかかるうえ、移動の負担もかかるため、学業との両立も大変になる。当時の取り決めでは、全国大会は中学校で原則禁止されて、高校では年1回まで許容された。

ただし、こうした国の規制は、競技団体の圧力を受けて年々緩和されてきた。1964年の東京オリンピック開催時など、競技団体は有望な選手を早期から鍛え上げるために、どんどん大会をしたいと要望し、学校教育活動“外”の全国大会を独自に主催し始めたりした。

短距離走
写真=iStock.com/tomazl
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不十分だった国の規制すら撤廃されてしまった

それを後追いするように、国は規制を緩めて、1979年には学校教育活動“内”の全国大会を、中学校で年1回、高校で年2回まで公式に認めるようにした。そして2001年になると、対外競技基準それ自体を撤廃した(これは大きな政策変化なので、データ分析は2001年までを区切りとした)。

こうした国の規制緩和の流れが、全国大会が増加してきた一因になった。

しかし、全国大会数のデータ分析の結果、実は、中学校で禁止されていた時代にも全国大会が開催されていたり、年1回、年2回と数値基準が定められていても、それを上回る回数の全国大会が行われていたことがわかった。また、学校の部活以外の地域・民間スポーツには国の規制がなかなか及ばないため、学校教育活動外の全国大会は独自に発展してきたことも明らかになった。

つまり、元々国の規制は十分ではなかったし、厳密に守られていたわけでもなかった。その上で、そうした不十分な規制すらも緩和されたり撤廃されたことで、さらに全国大会が野放し状態で増えていったのである。