高収入の仕事に就くことばかり考えている

お金を手に入れるために最も土台になるのは「働く」ことだといいましたが、多くの人は、この部分を誤解しているように思えてなりません。

たしかに働かない限り、収入は入ってきませんから、そういう意味では土台であることは間違いないのですが、とにかく収入を増やすことばかり考えようという人が多いからです。

でも、この部分が最も重要なわけではありません。収入の多寡よりも、むしろどれだけきちんとお金を貯めるようにしているか、そしてそのお金を増やすことを考えているかの方が、より大切だからです。

実際に、年収が300万円ぐらいでも、金融資産を2000万円ぐらい持っている人はざらにいますし、逆に年収1000万円でも、貯蓄がほとんどないという人もいます。したがって、年収を増やすこと以上に大切なのは、収支をコントロールすることなのです。

私は以前、『となりの億り人』という本を書いた時に、いろいろな人に取材をしましたが、金融資産を1億円以上持っている人の中に、年収数千万円というような人は、ほとんどいませんでした。つまり、高所得の人が、必ずしもお金を増やして資産家になっているわけではないのです。

ところが、実際には誰もが高収入の仕事を探そうとしています。そのためにスキルを身に付けようとか、資格を取ろうとか、いわゆる自己投資に熱心になる人は多いようです。

でも、いくらたくさん稼いでも、たくさん使ってしまえば、決してお金は増えません。だから、何も難しい資格を取って高い報酬を得ることができなくても、普通に働いて入ってくるお金をきちんと貯めていけば、お金は自然に増えます。

お金を数えて微笑む女性
写真=iStock.com/Hakase_
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使う前に貯められればお金は自然と貯まる

お金を貯める場合に一番大切なのは、「“貯める”という行為を、“使う”よりも先に行なうこと」です。稼いだお金をまず使って、残った分を貯めようということではまず不可能です。それではおそらく、永遠にお金は貯まらないでしょう。

でも、給与天引きであれ、銀行口座からの自動引き落としであれ、入った収入の一定割合をあらかじめ先に除いておき、残ったお金で生活するということを続けていけば、自然にお金は貯まります。

前述の『となりの億り人』でも、女性で投資もほとんどせず、給与天引きだけで40代半ばで億り人になったという事例が出てきます。彼女が言ったことでとても印象に残っているのは、「お金はあとから貯められない」ということです。

「本当にそんな単純なことでよいの?」と思われるかもしれませんが、実際、これぐらいシンプルなことをするだけなのです。したがって、こんなものはノウハウでも何でもありません。

でも、「誰でもできる」ということと、「誰でもやっている」ということは違います。わかっていてもなかなかできない人が多いというのも、また事実なのです。