変化球はどのようにして生まれたか

変化球の歴史は、カーブから始まったと言われている。

1863年、当時14歳だったキャンディ・カミングスは、海岸で友達とアサリや蛤の貝殻を海に投げて遊んでいた。するとカミングスは、自分が投げた貝殻が空中で大きく曲がることを発見。その後、1時間近く貝殻を投げて、大きく曲がる方法を探し出したカミングスは友人に「これを野球のボールでできたら、面白いことになるぞ」と語った。

17歳になったカミングスは、アンダースローから投げるカーブを武器にブルックリンのアマチュアチームで37勝2敗の好成績を残した。「ハーバード大学と対戦したときにボールを曲げて、空振りを何度も奪えた。試行錯誤のすえ、新しいボールが完成したと感じた」と振り返る。その後、プロ野球選手となったカミングスは通算145勝を記録した。

カーブボールの開発者については別の説もある。1870年8月16日にフレッド・ゴールドスミスが、ブルックリンのカビトリーノ・グラウンズで大きく曲がるボールを投げるデモンストレーションを行ったときが、初めてカーブを投げた瞬間とする説が有力視されていたのだが、カミングスは1939年に「初めてカーブを投げた投手」として野球殿堂入りを果たしている。

スライダー、チェンジアップの起源

カーブの次に市民権を得た変化球はスライダーである。こちらも諸説あるが、1903年にフィラデルフィア・アスレチックスでMLBデビューを飾った、チーフ・ベンダーが投げていた「ニッケル・カーブ」が現在のスライダーの元祖と言われている。

ルースと同時代に速く横に曲がる変化球を武器に活躍したクリーブランド・インディアンスの投手ジョージ・ウーレが「スライダー」の名称を考案したとされ、ルースは「ジョージが最もタフな投手だった」と回顧している。

チェンジアップの起源は、1880年代から90年代にプレーしていたティム・キーフが投げていた「スローボール」とされている。キーフは引退後、ハーバード大学の投手コーチや、ナショナルリーグの審判などを務め、1964年に殿堂入りを果たしている。殿堂に飾られているキーフのレリーフには、「史上初めてチェンジ・オブ・ペースを投げた投手」と書かれている。