※本稿は、AKI猪瀬『大谷翔平とベーブ・ルース』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
2021年は強靭な肉体を武器に46本塁打を記録
2021年、打者大谷は46本塁打という記録を残した。シーズン最終盤まで本塁打王争いに加わり、惜しくも2本差で逃したものの、MVPを獲得した。その活躍を受けて、22年も本塁打量産に期待がかかったが、本塁打のペースは2021年を下回った。
悪夢の「ロックアウト」が長期化した影響で期間は短縮されたが、エンゼルスのスプリングトレーニングはアリゾナ州テンピで行われた。大谷はもちろんだが、MLBで活躍する日本人打者は、技術力が非常に高く、スプリングトレーニングで行うバッティング練習中にバットを折るようなことはほとんどない。
しかし、2022年のスプリングトレーニングで大谷は、幾度となくバットを折った。普段見ることのない大谷がバットを折るシーンに、22年バージョンへのアップデートを目指す、打者大谷の新たな試みが推測された。
毎年更新される、緻密に計画したトレーニングをコツコツと積み重ねて、大谷は強靱な身体を手に入れた。その努力の結晶が、2021年に記録した46本塁打である。おそらく大谷は、自身のパワーがMLBでも十分に通用することを確信したシーズンだったはずだ。その確信をもとに22年は、より確実性を求めていたに違いない。打者が求める確実性とはすなわち「打率」である。
22年は新たな打撃フォームで打率を向上
打率を向上させるために大谷は、ボールを身体に近いところまで呼び込んで打つことを意識した。最短距離でバットが出るように、バットのグリップを下げる新たな打撃フォームの修得を目指した過程が、バットを折るシーンにつながる。しかし、完璧な状態に仕上げるには、スプリングトレーニングで消化した13試合34打席では少なすぎた。
シーズンに入ってからも大谷の試行錯誤は続いた。