「バレルゾーン」と「ランチアングル」の変化

打率は向上した大谷だが、本塁打に付随する成績は下がった。本塁打もしくは長打が出る確率が最も高いエリアを「バレルゾーン」と呼ぶ。ボールの射出角度が26度から30度以内、打球速度158キロ以上で打ち返すと長打が出やすいとされている。

AKI猪瀬『大谷翔平とベーブ・ルース』(KADOKAWA)
AKI猪瀬『大谷翔平とベーブ・ルース』(KADOKAWA)

さらに、打球速度が161キロならば、射出角度は24度から33度へ広がり、打球速度が187キロを超えると、射出角度は一気に広がり8度から50度になる。この条件でボールを打ち返すことができれば、高確率で本塁打を量産できるのだ。

2021年の大谷は、「バレルゾーン」でとらえた打球の割合がMLB1位となる22.3%を記録したが、22年は4位の16.8%だった。そして、平均打球速度も21年の150.7キロに対して、22年は149.6キロと落ちた。しかし、「バレルゾーン」でとらえた打球の本数は、21年が78本、22年は72本と大きな差はなかった。

本塁打に付随する成績で最も数字を下げたのが、「ランチアングル(打球角度)」だ。2021年は、平均16.6度の打球角度があったが、22年は12.1度しかなかった。

2023年は本塁打量産型と確実型のハイブリッドに

本塁打の打球方向も変化した。2021年はパワー全開で右方向に引っ張る本塁打が14本あったが、22年は4本と減り、右中間からセンター方向への割合が増えた。この傾向もスプリングトレーニング期間中に取り組んだ、ボールを身体に近いところまで呼び込む新しい打撃フォームの影響である。

2021年が打者大谷の完成形かと思いきや、22年はさらなる進化を追い求めた。本塁打量産型の21年に対して、打率が上がり、三振数が減少した確実型の22年。23年以降の打者大谷は、本塁打量産型+確実型を併せ持つ「ハイブリッド型」を目指すことになるだろう。

具体的には3割、40本塁打、100打点をコンスタントにクリアしていく打者である。この成績を残すことができれば、投手大谷の成績を加味することなく、毎年、MVP投票の上位5人に選出されるはずだ。

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