「学歴に見合った仕事」は破綻しつつある

そのニーズを引き上げたのが大学進学者数の急上昇だ。2000年には約100万人だった大学卒業生数(院卒含む)は2022年に1000万人の大台を突破し、今年は1158万人にまで膨れあがる見通しだ。

もちろん、教育レベルの向上は基本的には国力アップにつながるはずだ。李強首相は3月13日、全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)閉幕後の記者会見で、「新たな労働力は平均教育年数が14年に達している」「人材ボーナスは今まさに形成されようとしており、発展の原動力は依然として強靱きょうじんだ」と胸を張った。

そう、基本的には歓迎すべき話なのだが、問題は高等教育を受けた人々すべてにそれに見合った仕事を与えられるかにある。中国の大学・大学院卒業生数が右肩上がりで上昇する一方で中国の経済成長が減速するなか、「学歴に見合った仕事」の需給は破綻しつつあるように見える。

「日本企業に就職できたらいいな」という声も

こうした状況下で、近年注目を集めるのが「躺平族」(横たわり族・寝そべり族)という言葉だ。

中国の競争社会には終わりがない。過酷な受験競争を終えて大学に入学しても、もう大学生に希少性はない。では大学院進学だ、いや海外留学だとキャリアを積み重ねていく競争が続いてきたが、そうした肩書もすぐに陳腐なものになってしまう。だったら、必死の努力はやめて、ほどほどに努力する程度で楽しく生きていけばいいではないか……というのが横たわり族の発想だ。

「うちの子は『日本企業に就職できたらいいな』と言っています」と李さんは話す。

「給料は上がらないけど、問題さえ起こさなければ定年までずっといられる。死ぬ気で努力しないと昇進できず、結果を出せないとクビを切られる中国企業とは大違いですから」

公務員になれれば一番良いが、それがダメなら日本企業に行きたい。気づけば、日本は中国横たわり族の憧れの地となっているらしい。

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