セントラルキッチンは導入しない
山岡家の理念は「ラーメンでお客様に喜んで貰う」というものです。
通常、多くの飲食チェーンではセントラルキッチンで主要な食材の下準備や調理を済ませ、店舗に配送することでオペレーションコストを下げ、効率的に収益を上げようとするものです。
これに対して山岡家では麺は共通ですが、ラーメンの味の核となるスープ、チャーシュー、野菜類のカットはすべて各店の店内調理です。
スープは水と豚骨を丸3日煮込んで作ります。山岡家らしい味が出ているかどうか、山岡家の創業者である山岡正会長は実際に車で全店をまわりチェックし続けていると言いますから、そのスープに対するこだわりは並々ならぬものがあると言っていいでしょう。
新規出店はスープづくりを任せられる店長が育つことを目安にしているそうです。出店スピードがゆっくりなのは、納得のいかないラーメンを絶対にお客に提供しないという山岡家の理念に沿っているからなのです。
本当においしい山岡家ならではのスープを作れるようになる人材を育てるには、年間7~10店舗が出店の限界なのです。
コロナ明けでも絶好調
直近の山岡家を同業他社と比べてみましょう。
飲食店の客数回復が目立ってきた22年から23年1月期の山岡家最新決算期の年間数値は驚くほどの伸び率です。幸楽苑、一風堂も伸びていますが、売上高、客数共に年間通して20%以上の伸びです。
しかも22年5月以降は売り上げ、客数共に毎月2桁伸びています。業界トップクラスの伸び率です。しかもこの1年で閉店は1店舗しかありません。それも実質は移転のため閉店していますので、実質閉店はゼロ。
幸楽苑は59店舗減少、一風堂は国内・海外合わせて13店舗減少という中では素晴らしい数字です。
チェーン店でありながら、1店舗1店舗の店舗力を磨き、職人をじっくりと育て、自信をもてる味でゆっくりと店を出していく。新たなチェーン店のあり方を示しているように思います。
これからは単に規模の成長を追いかける時代ではありません。人口減少も始まっているわけですから、企業も新しい時代の成長のさせ方を考えるべき時にきています。
山岡家はそんな脱成長時代にきちんと伸びていくモデル企業なのです。
※編集部註:記事公開後、「『北海道発』というタイトルは間違いではないか」と複数の問い合わせをいただきました。ラーメン山岡家の1号店は茨城県牛久市にあります。ただし本稿では、北海道から店舗網が拡大し、運営会社の本社も札幌市にあることから、「北海道発」としています。初出時にこの旨を本文に盛り込むべきでした。ご指摘に感謝申しあげます。(4月7日16時00分追記)