政党の「色」、日本が進むべき「道」を伝える
こうしたなかで、日本の野党を強くするのに必要な政治マーケティングは、民意を探る①の要素、加えて支持者組織を拡大する③の要素です。
支持者を組織化する手法としては、五つ星運動や参政党のように、党の意思決定に参加している感覚をもたせることが重要です。インターネットを活用すれば十分可能です。
これまでの党員は、党費を払っても、せいぜい総裁選や代表選で一票を投じることくらいにしか参加意識をもたなかったでしょう。五つ星運動のように最終決定権まで与えることはないにしても、個別の政策決定に参加している感覚をもってもらうことが大切です。
そして、もっとも必要なものは、民意を探るマーケティングです。それは個別の政策に逐一賛否を問うようなものではなく、自分たちの政党の「色」、日本が進むべき「道」を探っていくものです。
個別の政策について有権者全員が賛成することなどありません。必ず賛否があります。そんななかで、過半数を得た政策を単純に並べても全体の整合性がとれないし、政党の「色」も出ません。自分たちが示す日本の進むべき「道」も漠然としたものになります。
ある政策については過半数を得るかもしれないが、ある政策は過半数を得られない。それでも自分たちの政党の色を出し、自分たちが考える日本の進むべき方向性がなんとなくであっても有権者に伝わるようにする――これが政治マーケティングの目標です。
野党は個別政策で勝負してはいけない理由
自民党は選挙に勝ち続けて政権を維持していますが、もちろんその考え方すべてに国民が賛成しているわけではありません。
自民党は選択的夫婦別姓、同性婚、女性天皇に明確に反対しています。他方、世論調査では国民の多くはそれらを支持しているという結果が出ています。
それでも自民党が選挙で勝ち続ける。それは自民党の「色」、自民党が示す日本の進むべき「道」が、現状では野党のそれらよりも、まだましだと評価されているからです。
したがって、野党は個別政策で勝負するのではなく、野党の「色」、野党が示す日本の進むべき「道」が自民党よりもましだと評価されることに力を注ぐべきなのです。
有権者にましだと評価されるためには、政治家の独りよがりの政治信条を有権者に押しつけることはご法度です。
政治マーケティングを駆使して、有権者に自民党よりもましだと評価されるような政党の「色」、日本の進むべき「道」を示していくことが政権奪取の鍵になるのです。
では、どうやって政党の「色」、政党が示す日本の進むべき「道」をかたちづくり、示していくのか。それは「色」や「道」を象徴するような課題解決策としての政策、制度を有権者に示すこと。今の野党は、有権者に受けるような個別の政策を羅列しているだけです。
それでは「色」は出ません。そうではなく、自民党ではおよそできそうにない、象徴的な解決策を提示する。そのうえで、口だけでない実行力を示すことも肝要です。