「同性婚見るのも嫌だ」荒井秘書官は更迭されたが…
官僚の不祥事は珍しいことではないが、首相側近が立て続けに問題を起こすことは極めて異例であろう。岸田文雄首相を支えるはずの荒井勝喜秘書官と岸田翔太郎秘書官のことである。
荒井氏は2月3日夜、記者団のオフレコ取材に応じた際、同性婚に関して「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと差別的な発言をした。毎日新聞は「岸田政権の中枢で政策立案に関わる首相秘書官がこうした人権意識を持っていることは重大な問題だ」(毎日新聞2月5日朝刊)と判断し、荒井秘書官の実名を出して報道。他社も追随し大問題となって、翌4日に荒井氏は更迭されることとなった。
オフレコ取材の内容を報道したことについては賛否両論あるが、オフレコ取材であっても匿名で発言が報道されることは許容されていることや、差別などが含まれた重大発言については過去に実名で報道された例があることを考えると、荒井氏の発言はあまりにも軽率であり、岸田政権の緩さが表れていると言えるだろう。
しかし、一方で、行動が問題視されながら、今もなお秘書官としてのうのうと勤務している人物がいる。そう、岸田首相が溺愛する長男、翔太郎氏のことである。
私はこの翔太郎氏がいまだに秘書官として勤務できていることこそ問題であると考えている。
「ただの土産話」で済まされる問題ではない
一度、翔太郎氏の問題について振り返ろう。
岸田首相は1月9日から15日にかけて欧米5カ国を歴訪。アメリカのバイデン大統領やイギリスのスナク首相らと会談し、5月に控えるG7広島サミットに向けて弾みをつける中、首相秘書官である翔太郎氏は公用車を乗り回して観光を繰り返していた。訪れたのはイギリスのビッグベンやバッキンガム宮殿、カナダのオタワ市内のマーケットなどの名所旧跡。1月26日発売の『週刊新潮』が報じ、マスコミ各社も後追いした。
国会でも取り上げられ、政府側の官僚は翔太郎氏の観光について「総理訪問についての対外発信に使用する目的での街の風景やランドマーク等の撮影、政治家としての総理の土産等の購入」だったと説明。「総理の土産購入は秘書官の公務なのか」という問いに岸田首相は「公務である」と答弁した。
国会のやりとりを聞いていても首を傾げたくなるが、今回の話をただの総領の甚六が起こした「土産話」として済ますことはできない。一事が万事そうなのである。かつて首相官邸を取材していた身として思うのは、ここに岸田政権の支持率が低迷している根本原因があるということだ。