後継者を育てるためのポジションではない
そもそも、首相に限らず国家公務員である秘書官というポジションが、身内を育てるために使われている永田町の風習に憤りを覚える国民は多いのではないだろうか。
世襲議員に対する風当たりも強い世の中だ。私はもう大臣を含めて身内を秘書官に就けることはやめたほうが良いのではないかと思う。もし、子供に「親の背中を見せたい」と思うのならば、せめて秘書官ではなく、秘書として起用してもらいたい。
「秘書官」と「秘書」は1文字違いだが、その意味合いはまったく異なるものだ。
秘書官は既に説明したが、「官」の字がつく通り、大臣などに仕える「官僚」である。一方で、秘書は地元や永田町などの議員事務所で個々の政治家の仕事をサポートする存在だ。
今回、翔太郎氏がした土産購入なども、秘書の仕事であったならばうなずけるところだ。たとえ首相や大臣であっても、個々の政治家としての活動という側面が強い雑務については事務所の秘書に任せるべきではないだろうか。
長男は私設秘書として雇えばいい
岸田首相が翔太郎氏を後継として育てようとしていたとしても、秘書官ではなく、事務所の秘書として雇っているならば何ら問題はない。
細かい話になるが、国会議員は公設秘書を3人まで持つことができる。国費で給与を賄える特別職の国家公務員だ。そのため、議員事務所で給与を負担する私設秘書として雇うことがより適切だろう。
いずれにしても、政務秘書官というポジションに長男の翔太郎氏を置いて、土産購入などをさせているということは、岸田政権が置かれている政治的状況を見ても、あるいは身内びいきと思えるような永田町の風習から考えても、到底理解できるものではない。
岸田首相が自らの政権を安定させたいと思うならば、すぐにでも翔太郎氏を政務秘書官から外し、政局観に長けた人物を新たに登用するべきだ。これは揶揄などではなく、心の底から思う本音だ。
翔太郎氏の問題を、単なる外遊の「土産話」として消化し、このまま国会を乗り切ろうとしているのであれば、その甘さが政権内部を蝕み、また新たな火種を抱えることになるだろう。
問題の本質を見極め、自らの「異次元の甘さ」を断ち切ることができるかどうか、これが今の岸田首相には問われている。