パリやロンドンの名所観光は「本来業務」?

せっかく息子の件が“鎮火”しかけたのに、これでまた蒸し返されるじゃないか――。そんなふうに、岸田首相はじだんだを踏んでいるかもしれない。

政府・与党連絡会議で発言する岸田文雄首相(手前)。右奥は岸田翔太郎首相秘書官=2022年10月4日、首相官邸
写真=時事通信フォト
政府・与党連絡会議で発言する岸田文雄首相(手前)。右奥は岸田翔太郎首相秘書官=2022年10月4日、首相官邸

荒井勝喜首相秘書官が、「(LGBTなど性的少数者や同性婚の人が)隣に住んでいるだけでも嫌だ」と発言して更迭されたことを受けて、「岸田政権の秘書官といえば先月も……」という感じで、首相の長男で政務秘書官である翔太郎氏の「公用車での観光疑惑」が再び脚光を浴びてしまっているのだ。

ご存じのない方のために説明をすると、これは『週刊新潮』が報じたもので、父の欧州訪問に同行した翔太郎氏は、パリでは大使館の公用車で市内を観光し、夕食は希望するビストロで過ごしたという。また、ロンドンでも公用車でビッグベンとバッキンガム宮殿を観光して、百貨店「ハロッズ」でショッピングを楽しみ、カナダでもお土産などを購入していたというのだ。

この報道を受けて、首相はこの土産購入などは「秘書官の本来業務」だと釈明したが、野党は「公私混同」だと厳しく批判している。

秘書官人事以降、支持率は落ち込み続ける

翔太郎氏といえば、月刊誌『FACTA』が昨年12月、フジテレビの美人記者に官邸内部の情報をリークしているのではないかという疑惑を「FACTA ONLINE」で報じたことも記憶に新しい。相次ぐ不祥事に一部メディアは翔太郎氏を「ドラ息子」などボロカスにこき下ろしており、政治評論家の中には、岸田政権の「アキレス腱」になるなんて見立てをする人もいる。

それはあながち大げさな話ではない。岸田政権の支持率は昨年下半期から低迷が続いているのだが、翔太郎氏が秘書官になった10月からはさらに落ち込んでおり、美人記者リーク疑惑が報じられた昨年末もさらにガクンと落ち込んだ。

そして今回、「観光疑惑」の後も歯止めがかからない。社会調査研究センターが2月5日、NTTドコモと共同開発したインターネット調査「dサーベイ」で全国世論調査を実施したところ、内閣支持率は前回1月8日の調査から2ポイント減の23%で過去最低となった。

このような話を聞くと、国民の多くは、「なぜ岸田首相はさっさと長男をクビにしないのか?」「そもそも、なぜ政治経験のない長男を秘書になんてしたのか?」なんて疑問を抱くことだろう。

そこでよく言われるのは、「信頼できる身内を近くに置いておきたい」ということだ。