この1%の差を、どう見たらいいでしょうか。否決は否決ですから、大阪都構想は実現しませんでした。
ただ、同時に僕が強く思うのは、明治維新から実に150年ほども続いてきた権力機構・行政機構は、すでに現代日本の政治行政の基盤として機能しなくなっているということです。
時代が変われば、あるべき権力、行政、つまり国のかたちも変わって当然で、やはり古い体制は新しい時代に合わせて変えていかなくてはいけません。
既得権益層と戦い、打ち勝ち、改革していく。これもまた、政治家にしか果たせない役割なのです。与党政治家は基本的に現行の体制を維持し、既得権益層の保護に努めることに力を注ぎます。
そうであれば、現行の体制を抜本的に改革するのは野党政治家にしか果たせない役割、といっていいでしょう。
現在の僕のようなコメンテーターや、有識者などといった、口だけ人間には決してできない仕事なのです。
「専門領域の聖域化」を打破する
弁護士もそうですが、国家資格をもついわゆる士業は自分の領域を守りたがる傾向が強いものです。弁護士の隣接士業に司法書士という職業があります。
彼ら彼女らの法律家としての実務的能力は、たとえば消費者金融業者との債務整理の解決などには十分対応できます。
にもかかわらず、日弁連などは、これら債務整理は弁護士の業務領域だと主張して譲らず、司法書士の参入に強硬に反対しました。
もめにもめて結局、司法書士は元金140万円以下の少額の債務整理に限って担うことができる、というところで決着しましたが、本当にそれでよかったのでしょうか。司法書士をもっとフル活用すれば、日本の司法サービスは充実するはずです。
また新型コロナ禍では、感染拡大期において医療従事者の業務が逼迫したことで、ある種の医療崩壊状態にまで進んでしまいました。感染を抑えてそれを防ぐために、社会経済活動を止める方策が繰り返され、日本の経済が著しくダメージを受けました。
そこで、医師の業務を看護師、薬剤師で分担し合うタスクシェアが議論されましたが、日本医師会が強く反対。
先に述べた弁護士の債務整理業務と同じく、医師のほんの少しの業務を看護師に担わせ、看護師のほんの少しの業務を薬剤師に担わせることで決着しましたが、これでは医療従事者の業務逼迫を抜本的に改善するまでには至りません。
このように「今の地位」にこだわる傾向はいろいろな産業にあります。たとえば、農業、漁業など付加価値の高い一次産業を大規模な産業に転換できれば、それは日本の強みになるはずです。
個人の第一次産業従事者が、産業化によって会社組織の一員になることについて、農協や漁協などの抵抗感が強いのかもしれませんが、しかし、日本が前進していくためには避けて通れない改革課題だと僕は思っています。