アンラーニングの阻害要因「役職の変わらなさ」

まずは、「役職の滞留年数」とアンラーニングの関係を見てみましょう(図表1)。

課長や部長といった役職についてからの期間とアンラーニングの関係を見ると、役職に就いて「3カ月から半年未満」でアンラーニングがピークに達し、その後下降している様子が見られました。これは一人のサンプルを追跡調査したものではないので正確性には欠けますが、実にきれいな傾向が出ています。

このデータに従うならば、管理職は、その役職に就いてから半年から1年程度でこれまでの仕事のやり方を捨て、新たな仕事のやり方を模索するプロセスを盛んに行っているようです。逆に言えば、最初の3カ月程度はこれまでのやり方を温存し、「しばらく様子見」の時期を取っていると言っても良いかもしれません。

多くの管理職研修は役職に就くタイミングで、初任者研修や新任管理者研修といった形で行われますが、もしかすると、最初の数カ月はとにかく役職に就けてみて、そのあとに「管理職になって体験したことや感じたこと」を持ち寄った状態で研修をスタートするほうが理にかなっているのかもしれません。少なくとも就任から数カ月後に何らかのサポートやフォローは必要そうです。

また、一つのポストに5年以上就き続けている管理職は、役職に就いた直後よりもアンラーニングがさらに減少していることも興味深い点です。昇格も降格も異動もしないまま、長く安定的な地位にいることで「同じ仕事のやり方や自分のスキルを捨てられなくなってくる」ということでしょう。

アンラーニングの阻害要因「中途半端に良い人事評価」

次に、特徴が表れたのは個人が受けている「人事評価」とアンラーニングの関係です(図表2)。

個人が組織から受けている人事評価の結果とアンラーニングの関連を見ると、「アンラーニングしていればしているほど評価が高い」とか、「評価が低いほど、アンラーニングが進む」といった線的な関係ではありませんでした。

実際には、5段階中「4」という、「やや良い評価」くらいの評価をもらっている従業員が、最もアンラーニングする傾向が低いという傾向が見られたのです。人事評価の評価スケールは企業によって10段階、7段階などさまざまありますが、調査では便宜上、5段階に直して回答してもらっています。ここでアンラーニングが最も低かったのは、「5段階中の4」の評価の人。「飛び抜けているわけではないが、やや良い評価」くらいに見ておくのが適当でしょう。