他への波及はあるのか

では、今回のSVBのようなことが他にも起こったり、波及して金融危機のような事態になったりするのだろうか? ということが気になります。将来のことは誰もわかりませんから、絶対ということは言えないものの、私はそれほど大きなことにはならないだろうと思っています。もちろん他にもSVBのように大きな損失を抱えている銀行はあるかもしれません。リーマンショック後、大手銀行はかなり厳しい規制に縛られてきましたから今回のようなことは起こらないでしょうが、SVBの場合はリーマン当時、「システム上重要な金融機関」の指定を受けていませんでしたから、金融当局の監視も緩かったでしょうし、他にもそういうケースは出てくる可能性はあると思います。

しかしながら今回の問題はリーマンの時とは全く異なります。なぜならリーマンが構造的な問題であったのに対して、今回は個別の問題だからです。リーマンショックの原因となった構造的な問題とは、「住宅ローン担保証券の格付けの甘さ」や「当時の銀行の自己資本比率の低さ」、そして何よりも「本来、貸すべきではなかった人達にも貸してしまったこと」などです。今回のSVBの問題にはこういう構造的な面はありませんから、過剰に心配する必要はないと考えています。

市場分析
写真=iStock.com/Vanessa Nunes
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今、正しい投資スタンスは

したがって、今回のような出来事はあくまでも一過性のものと考えて良いと思いますので、投資をしている人にとっては、特段焦って何か行動を起こさなければならないことはないと思います。もちろん今後もこうしたケースが出てくることは想定されることは前述の通りですが、仮に当面、こういった銀行の破綻が続いたとしても長い目で見ればやはり一過性であることには変わりありません。リーマンショックのような構造的な問題ですら、数年間を経て考えてみると、問題なく正常な状態に戻っています。

もちろん株式を短期売買でトレードしている人にとってはこうした短期的な上下をうまく乗りきることは、収益が生まれるチャンスでしょうし、そのためには状況を見て機敏に動く必要はあるかもしれません。しかしながら、そもそも短期的な価格の動きなど誰も的確に当て続けることは不可能ですから、どこまで行っても投機でしかありません。そう割り切ってやるのであればともかく、少なくとも長期的に資産形成をやろうと考えている人にとってはそういう短期的な投機売買をやるべきではないでしょう。短期的な価格の変動で慌てて動かす方が余計に傷を深くすることになりかねません。