政府は20年近く前から皇位安定継承の問題を議論してきたが、結論が先延ばしされてきたのはなぜなのか。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは「政府はおそらく、この問題の本当の解決策が1つしかないことを知っているだろう。しかし、その解決策には強硬な反発が予想され、それに臆して先延ばしにしてきたのではないか」という――。
岸田首相「先送りの許されない課題」と呼びかけ
去る2月26日、岸田文雄首相は東京都内で開かれた自民党大会で、皇位の安定的な継承をめぐる問題に触れ、「先送りの許されない課題で、国会で検討を進めていく」と表明した。
これは、政府が昨年(令和4年[2022年])1月12日に皇族数の確保策を検討した有識者会議報告書を、国会での議論に委ねて以来、1年以上が経過しても、何ら目立った進捗が見られない現状に対して、さすがに苛立ちを覚えたためだろう。
国会の状況を見ると、確かに事態は呆れるほど動いていない。
また露呈した与党の「やる気のなさ」
政党の取り組みとしては、わずかに日本維新の会が昨年4月14日に、報告書にあった「旧宮家系国民男性を皇族の養子として皇室に迎える案」を高く評価する見解をまとめ、衆参両院議長に提出したぐらいだ。
自民党の場合は、先の岸田首相の呼びかけに対し、党の幹部が「首相発言は唐突で、具体的な指示は何もない」と反発する始末だ(読売新聞オンライン3月6日7時18分配信 )。
岸田氏の発言が口先だけのものだったことを裏付けるとともに、政府サイドから振り付けしてもらわなければ自発的には何一つ進めるつもりがない“やる気のなさ”が露呈している。
“自民まかせ・他党まかせ”の立憲民主
本来なら事態打開の先頭に立つべき野党第1党の立憲民主党も、驚くほど沈滞ムードだ。3月3日の泉健太代表の定例記者会見での発言では、“自民党まかせ・他党まかせ”の依存体質があからさまに出ていた。
「自民党がこの皇位継承についての議論をする環境をつくれば、他党は基本的に応じると思いますよ」
「他党との話し合いということを重視すべきだと思っておりますので…独自に今先立って立憲民主党がアピールするということを考えているわけではありません」
「他党との話し合いということを重視すべきだと思っておりますので…独自に今先立って立憲民主党がアピールするということを考えているわけではありません」
その「他党」の1つ、国民民主党の玉木雄一郎代表は雑誌のインタビューで次のように発言していた。
「今国会中には何らかの政党としての回答をしたいと思います。皇位の安定継承に繋がるあらゆる選択肢はできるだけ多く用意するという観点から議論を集約させていきたいと思っています」(『カレント』3月号)
立憲民主党よりは多少やる気があるということか。