必要なときに、必要な人材を調達する

その課題が2020年の新型コロナウイルスの感染拡大以降、大きく改善されました。ステイホーム時期には、多くのオフィスから人が消え、いつもなら目の前に座っている部下たちが、各々自宅に散らばり、オンラインでつながるようになったのです。

当然、口頭で気軽に仕事を頼むことや、進捗状況を確認することもできなくなりました。やりとりはすべてオンラインとなり、従来の仕事のやり方とは随分と勝手が異なる環境に、会社も上司も試行錯誤するようになりました。その結果、「誰に・何の業務を・いつまでに・どのレベルまで」やってもらうのかを上司やチームが、明確に把握しておくノウハウが蓄積されていったのです。

会議中に注意深く耳を傾けるアジアのビジネスウーマン
写真=iStock.com/SunnyVMD
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そして部下に業務を「発注」できるならば、外部人材にも「発注」できることに気づいた現場が続出しました。日々の業務は部下に発注しても、「この業務のここは外部のプロ人材に発注するか」など、業務の切り出しが可能になった。

もしくは、「この期間だけ専門家が必要だが、常在かつ恒久的には必要でない」場合もありますよね。

「事業のスタートアップ時期だけ」
「システムを構築するときだけ」
「広報部署をアップデートしたいときだけ」

専門知識を持つプロ人材が欲しいなら、期間を決めて外部人材に依頼するのがもっとも効率的です。必要なときに、必要な人材を、必要なだけ調達すればいい。

「会社に座って働く」への対価の今後

生半可な知識しか持たない社員が、見よう見まねで試行錯誤するより、百戦錬磨の外部プロ人材に教えを請うたほうが、はるかに効率的に進む場合は多々あります。

実はこうした働き方・仕事の発注の仕方は、これまでもコンサルティング業界やシステム業界、広告代理店業界などではよく見られたものでした。クライアントごとにプロジェクトを組み、そこに各個人が集いチームとして協働する彼らは、対象のプロジェクトが完了すれば、チームを解散させ、新規のプロジェクト先に再び集っていく働き方をこれまでも重ねてきました(だからこそ、コンサルタント業界に勤める人は、独立しやすいという傾向があったのです)。その手法がコロナ以降、他の業界・分野にも波及していきました。

「ジョブ型雇用」という発想も、最近ますます浸透してきましたよね。これまで「会社に座って働くこと」に対して支払われてきた報酬が、「アウトプット」に対して支払われるようになる。そうなれば、何も「この会社の、このプロジェクト」でなくても、「あの会社の、あのプロジェクト」に参加したっていいわけです(少なくとも意識のうえでは)。