109に来るために渋谷に来るわけではない

その理由を簡潔に言うと、みんな商業施設に対しては、あまり興味がないからです。もちろんSHIBUYA109が大好きで、SHIBUYA109に遊びに来るために渋谷に来る、と言ってくれる人もいます。しかし残念ながら、そのような若者ばかりではありません。むしろ渋谷に来る目的は、SNSで話題の路地裏にあるカフェを訪れるためだったり、全く別にあるのです。

渋谷109の入口
写真=iStock.com/Robert Way
※写真はイメージです

その日のメインの用事が終わった後、友達とふらふらと渋谷を巡り、買い物などを楽しむ流れの一環で、SHIBUYA109が浮上してくるだけにすぎません。しかし、そのときでさえ、「SHIBUYA109に行こう!」と話し合って決めることはありません。

彼らは、友達と回るルートが大体いつも決まっています。そのルートの中にSHIBUYA109が入っている場合に限り、フラッと立ち寄っているわけです。SHIBUYA109だけの話ではありませんが、都会の商業施設は、彼らにとって目的の場所になることはほとんどないのです。あくまでも選択肢の一つです。したがって、彼らのお決まりのルートの中に、SHIBUYA109をいかに入れてもらえるかがカギなのです。

SHIBUYA109がアパレル店舗の比率を下げた

Z世代が、「この商業施設で◯◯がしたい!」と考えながら渋谷の街を歩くことはほとんどありません。企業サイドは前提として、自分たちの商品やサービスはターゲットの若者たちの生活の中心には存在していないことを常に念頭に置いておかねばなりません。

しかしこれは、ハッキリ意識していないと、意外と至難のワザかもしれません。だからこそ、商業施設に関することよりも、わざわざ出向いて行くカフェの魅力や、ヲタ活の楽しみ方、そしてSNSに投稿する写真や動画の撮り方やそのこだわりについてを中心に聞いています。そこで発見された行動原理を応用し、SHIBUYA109の館内の企画に落とし込んでいるというわけです。

例えば、10年ほど前のSHIBUYA109の店舗は、アパレル関連の店舗がほとんどを占めていましたが、彼らの声を聞いて明らかになった消費行動(アパレルよりお金を落としているのは、コスメや食、エンタメであるという実態)を基にテナント構成を変更しました。端的に言えばアパレル比率を下げ、そこに、これまでSHIBUYA109にはなかった要素の店舗を追加したのです。