欧米の健康法をそのまま導入する日本の医師
医者の言うことが当てにならないもうひとつの理由は、日本の医療業界では外国の調査データや健康法をそのまま適用する点です。
人には個人差があるように、人種間にも体質的な差があります。そのほか、文化的な背景も食文化も違います。だから、外国人では効果のあった薬や治療法が、日本人に対しても同じように効果があるかはわかりません。それにもかかわらず、人種差や文化的背景を考えずに画一的な治療法や健康法を行うことは、逆に危ないと私は思います。
たとえば、日本では盛んに「肉食は体に悪い」と喧伝されてきましたが、これも欧米の健康法をそのまま導入しているからです。
肉食中心で肥満が多い欧米では、多くの国で死因の1位が心疾患です。肉類を食べると動脈の壁にコレステロールが溜まって、血圧が上がり、血管が詰まりやすくなると考えられています。結果、心筋梗塞が起こりやすくなるので、欧米の医者たちは「肉を食べすぎるな」と患者に伝えるのです。
ただ、日本の場合、この忠言が当てはまるのかは、はなはだ疑問です。
日本の高齢者は積極的に肉を食べるべきだが…
たしかに近年は日本人の食生活も欧米化していますが、食文化や体格の違いから、実際に肉を食べる量は欧米人よりも日本人のほうが圧倒的に少ない。日本人の食生活や体格などを見ていると、欧米人と違って肉の摂取を減らす必要はないのです。
さらに、欧米人と日本人でその死因は大きく異なります。欧米人の死因の第1位は心疾患です。一方、厚生労働省が発表した令和3年(2021年)の「人口動態統計」によれば、日本人の死因の第1位はがん(腫瘍)で26.5%、第2位は心疾患(高血圧症を除く)で14.9%、第3位は老衰で10.6%、第4位は脳血管疾患(7.3%)です。そもそも欧米人よりも心筋梗塞のリスクが少ない日本人が肉食をやめたところで、それほど健康に影響があるとは思えません。
むしろ、肉は効率的にタンパク質を補給できる食材なので、高齢者は積極的にとるべきです。にもかかわらず、日本の医学界では、「高齢者は肉を食べないほうがいい」と喧伝する。これは由々しき事態でしょう。
人種が違えば、体のつくりや食生活も違うので、健康常識が変わるのは当然のこと。本来は、日本人の食事量や体質に即した健康法を伝えるべきなのに、データのない日本は欧米に倣って表面的に、「肉食を控えるように」と患者に伝えることしかしないのです。