欧州勢は追い込まれてEVをやらざるを得なくなった

しかし、HVの登場以降、様相が変化する。特に内燃機関を急速に過去の技術にしようとしている原因は、欧州のクリーンディーゼルの性能偽装に端を発していると言っても良い。欧州の自動車メーカーはフォルクスワーゲンをはじめ各社が、日本のHVに対抗するために、クリーンディーゼルを環境に良い自動車として売り出そうとしたが、多くのメーカーで環境性能の偽装が発覚。ディーゼルエンジンを含む内燃機関そのものが欧州においては、環境に悪い過去の技術というレッテルを貼られてしまった。

よく欧州メーカーはEV開発を早く始め、日本は周回遅れのようにいわれることもあるが、それは正しくはない。日本にも日産、三菱のように積極的なEV開発メーカーはいるし、トヨタやホンダもEVを開発しつつも、EVだけではCO2削減につながらない市場に向けて水素などのその他の選択肢を残すことで、将来の不確実性リスクを避けようとしている。

むしろ追い込まれてEVをやらざるを得なくなったのが欧州勢である。もちろん、ルノーにもそうした焦りがあり、譲歩してでも日産のEV技術の協力を得ようとしているとみられる。

2022年1月12日、横浜・みなとみらいにある日産自動車グローバル本社
2022年1月12日、横浜・みなとみらいにある日産自動車グローバル本社(写真=ApaApJt/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

日本のエレクトロニクス産業が直面した状況と似ている

先に、これまでは中堅メーカーでもそこそこ連続的な技術変化に対応できれば利益が出てきたと述べたが、これからの自動車産業は日本のエレクトロニクス産業がこの20年直面したような厳しい環境にさらされることが予想される。

1990年代まで日本の電機各社は金太郎飴のように各社同じような製品ラインアップを持つ、総合家電メーカーであった。アナログ技術の延長の時代にはそこそこの販売数量でもそこそこの利益を出し、そこそこの規模の企業でも市場に残ることができた。しかし、2000年代以降のデジタルの時代になると、製品の機能や性能はソフトウエアと半導体によってつくり出されるようになり、大規模な投資をした企業が市場を総取りし中堅メーカーが淘汰とうたされる厳しい状況が生まれた。

今日の自動車産業もそれに似ている。中堅メーカー各社は独自に内燃機関に代わる新たなパワートレインを自社内だけで開発することが厳しくなっている。トヨタのような王者は複数のパワートレイン候補を残すリアルオプション的な戦略をとることができるが、中堅メーカーではそれはかなわない。日産と三菱は早くからEVにベットした企業であり、その技術蓄積もある。しかし、今後の競争はさらに熾烈しれつになるだろう。