日産はルノーよりも大きな自動車メーカーに返り咲いた

HV開発をスキップした日産は、早くからEVにシフトし、同じくEVに積極的な三菱自動車を傘下に置いた。また、同時に、ガソリンエンジンとモーターを組み合わせた独自技術e-POWERも開発している。これはコンパクトなガソリンエンジンで発電をし、その電力でモーターを回転させるという構造的にはEVや燃料電池車に近い考え方の技術だ。

ルノー流の経営の効率化(ここには現在も韓国現代自動車が抱える労組との対立という問題の解消も含まれる)と、e-POWERやEVに代表される日産の技術によって、日産の経営状況は回復するようになった。

ここ数年はコロナの影響もあり、販売台数を落としているものの、日産はもはやルノーよりも大きな自動車メーカーに返り咲いている。2022年の生産台数をみると、トヨタがトップで1048万台、2位のフォルクスワーゲン(826万台)、3位の現代自動車(685万台)に次いで、ルノー・日産・三菱グループは616万台で4位。そのうちルノーは142万台でしかないのに対して、日産は323万台とグループトップブランドになっている。

イタリア・ヴェローナの通りで充電中の日産のEV
写真=iStock.com/Joaquin Corbalan
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ルノーが画策するEV事業の新会社には、日産の協力が不可欠

そこで出てきたのが、出資比率の見直しだ。すでに日産の半分以下の台数となっているルノーとは、傘下としてではなく対等な関係で連携したいというのが日産の思いであろう。一方、ルノー側としても、日産・三菱が持つEV技術は欧州市場で欠かせないものとなっており、ルノーが画策するEV事業の新会社には日産の協力が不可欠とみられる。その結果、日産側に譲歩する形で今回の出資比率見直しが実現したのではないだろうか。

自動車産業は長く大きな技術変革に直面してこなかったので、大手、中堅メーカー問わずに、そこそこの連続的な技術進化に対応でき、デザインやコンセプトの良い車であれば、そこそこの売り上げと利益を確保できる産業であった。ゴーン改革初期のデザイン全振りのような極端な事例は長続きしないものの、内燃機関技術を効率よく改善し、連続的に機能的価値を高めつつ、新たなデザインや新たな用途提案などの高い意味的価値を提案し続けるというのが最近までの自動車産業の基本的な製品開発戦略と言っても良い。

基盤技術の大きな変革がなかったからこそ、自動車産業には多くの下位メーカーが生き残ることができたと言うこともできる。