ルノーの支配から抜け出すには、今が格好のチャンス

EV化は自動車の構造を飛躍的に簡素化するので、大量生産のメリットが出やすくなる一方で、中国企業などの新規参入も容易にした。また、コストの大部分を占める基幹部品がリチウムイオン電池になると、安く大量に電池を調達できるメーカーほど利益が確保しやすくなる。一方で、これまでとは非連続なパワートレインの開発の為には巨額の開発投資が求められるので、企業の規模はこれまで以上に求められる。

こうした競争環境の変化の中で、ルノー・日産・三菱グループは、全社合わせて世界4位のポジションを維持できているので、その規模を守るためにも日産はルノーを必要とするし、ルノーも日産の技術とビジネスの規模を必要としている。EVシフトという基盤技術の大きな変革の中で、経営状況の改善した日産が、ルノー支配から抜け出すには今が格好のチャンスであったと言えよう。

日産も含めて今後の自動車産業の課題は、規模の拡大と維持である。内燃機関では、大量の部品点数と複雑な製品アーキテクチャ(構造)によって、高い参入障壁が設けられていたので、技術蓄積のある既存自動車メーカーによる市場の寡占が可能であった。しかし、既にテスラやBYDのような新規参入企業が容易に急成長してきたようにEV市場においては、従来の参入障壁は機能せず、新規参入が容易となっている。

今後の自動車産業の課題は、規模の拡大と維持

また、レギュレーションによってEV化が避けられない欧州市場やカリフォルニア州などの一部の市場ではEVの商品ラインアップが必要となるが、新興国を中心に、電力が火力に依存していたり、EVの充電インフラが十分に整っていなかったりする市場では、これからもHVやe-POWERのような技術を活用した商品も必要となる。車種数を絞ったことで効率化を図った日産であるが、地域毎に異なるパワートレインが求められるようになれば、車種数は増加傾向となるので、それぞれ一定数以上の販売台数がなければ、収益化が難しくなる。

さらに、EV自体もリチウムイオン電池という外部調達が必要な部品がコストの大半を占めていることや、自動運転技術の進化には大量の半導体製品の調達も必要となり、これらの新たな電装部品を外部から調達するときに、自動車メーカーの規模が大きければ大きいほど、部品を生産するエレクトロニクスメーカーに対してバーゲニングパワーが強くなるので、やはり規模の大きさは重要となる。