これが世界で営業するということの現実です。市場が違えば、想像を超えたいろいろなことが起こります。そこで勉強して、経験して、賢くなり、ひとまわり大きくなれるのです。海外なんて冗談じゃないなどという社員はいりません。
海外を重視するのは、建設機械の市場が様変わりしてしまったからです。つい4、5年前までは先進国と新興国の需要比率は半々でした。ところが、今は新興国が75%です。日本市場はわずか数%にすぎません。
こうした環境下で、私たちは3つの軸で稼ぎます。第1の軸はハード(製品)、第2の軸はソフト(バリューチェーン)、第3の軸は地域(マーケット)です。
まずメーカーである以上、第1の軸である優れた製品づくりは絶対条件です。ただし、製品はフローですから、景気が良ければたくさん売れますが、リーマンショックのように景気が悪くなればパタッと止まってしまいます。
実際、3000億円企業だった2003年に、1兆円企業を目標に掲げたところ、08年3月期決算は売り上げ1兆円目前まで迫り、経常利益は1000億円を突破しました。目標達成は間近と思ったら、リーマンショックで日米欧の需要が消えてしまった。
そこで第2の軸であるバリューチェーンです。販売時のファイナンスやアフターサービス、中古車買い取り、廃棄まで多岐にわたります。すでにお客様の手に渡った製品、つまり何十万台もの過去のストックに対するアフターサービスや部品供給などのビジネスは、リーマンショックで新車売り上げがゼロになっても、利益を生み出してくれるため、景気変動に大きく左右されません。
さらに第3の軸として、売れる地域・市場で売るという考え方です。日米欧の需要が消えても、他の市場でカバーすればいい。例えば中国には早くから進出していましたが、この中国がリーマンショックから9カ月後には対前年でプラスに転じ、その2カ月遅れでアジア諸国の市場も動き出してくれました。また、資源開発が盛んなアフリカにも進出しました。鉱山でも建設機械は必需品だからです。
この「ハード」「ソフト」「地域」の3軸をバランスよく伸ばしていくことが、日立建機の成長の原動力となります。