気の進まない仕事は続けてもいいのだろうか。アイドル志望からお笑い芸人の道に進み、『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由』(徳間書店)を上梓したお笑いトリオ・安田大サーカスのクロちゃんに聞いた――。(聞き手・構成=フリーライター・東川亮)
お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃん
撮影=門間新弥
お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃん

アイドル志望からお笑い芸人の道へ

――元々はアイドル志望だったそうですね。

僕はアイドルになりたくて芸能界入りを目指したけど、どういうわけか安田大サーカスという芸人になって、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)でゲスキャラ、いじられキャラになり、気がついたらプロレスに参戦したり、アイドルのプロデュースをするようになっていて。自分からこうなろうなんて一つも思ってなかったですし、「アイドルになりたい」っていう自分のプランはもう崩れっぱなしなんですよ。

僕が目指していたアイドル像というのは、ジャニーズみたいなものではなくて、松田聖子さんや荻野目洋子さんといった人たちでした。僕は性別は男ですけど、女性以上に女の子っぽくなりたかったんです。

あとは、自分の特徴でもある甲高い声もあって、「もののけ姫」を歌う米良美一さんなんかも意識していました。

よく、「夢は口にすれば叶う」とか言いますけど、僕に関しては全然叶っていないんです。僕はお笑いが好きなわけじゃなかったですし、お笑い芸人なんて、向き不向きで言えば僕は全然向いていないですよ。

お笑い好きだったら今の自分はなかった

――ではなぜ向いていないお笑い芸人を続けられたのでしょうか。

向いてなかったからこそ、今も続けられていられるんだろうなと思いますね。そもそも僕は、お笑いを通ってきていないですから。お笑い番組を好きな人たちは、お笑い番組を見て劇場に通ったりとか、勉強したりしているじゃないですか。僕はアニメとか漫画しか見てなかったから、お笑い芸人になった時もめちゃくちゃ苦労しました。

ボケるにしても、僕は一般常識がなくて単に突拍子のないことしか言えなかったから、ボケ方とかも全然分からなかった。つらくて泣いていたこともありました。

でも、それがみんなと違う型になって、人と被らないようになったから、今があるんじゃないかなと思います。ある意味、僕がお笑い好きだったら、逆に今みたいなポジションにたどり着くのは無理だったんじゃないかな。