まずはやってみて得意・不得意を見極める

お笑いも、分からないし好きじゃなかったけど、やっていくうちに少しずつ「リアクションがいい」とか「ドッキリに引っかけられているのがいい」「隠し撮りされているとめちゃくちゃ面白い」とか言われるようになりました。自分でもよく分からない評価のされ方ですけどね(笑)。

だから、やりたくないことをやらなければいけないときは、まずは下手に皮算用せず、とりあえずやってみたらいいんじゃないかと思うんですね。そして、与えられた役割を成立させる。だいたい、何か役割を与えてもらえるだけでありがたい話なわけですから、まずはそれを一生懸命やるべきなんじゃないかなと。僕もそういうふうに心掛けていたら、自然と新しいお仕事につながってきました。実際にやっていくことで、自分の得意・不得意も見極められますから。

やりたいことを主張するなら、それなりのものを見せられなければ自分が不利になっちゃいます。だからやりたいことをできないとしても、今与えられたものを必死にやりながら、それができる時を待つのがいいと思います。

それに、やりたくなかったことでも実際にやっていく中で面白く感じるところも見えてきますから。どんなこともマインドの持ち方一つだと思いますし、僕はそういう頭の切り替えはめちゃめちゃうまいと自分で思っています。慣れない人にとっては最初は難しいかもしれませんけど、ものの見方を工夫するのは、練習してみて損はないと思いますよ。

お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃん
撮影=門間新弥

「誰かのせいにする」のは必ずしも悪いことじゃない

――やりたくないことを続けているうちに、つらく感じてきた場合はどうすればいいのでしょうか。

自分がやりたくないことをやるなら、うまくできないことも多いと思うんですよ。NHKの「ブシメシ!」という時代劇に出た時に、「ナガダマ」(望遠で撮影すること)って言われて、「長い間黙っていること」だと勘違いしてそうしていたらめちゃめちゃ怒られたことがありました。でも、そこで落ち込んでもしょうがないですし、それだったらいっそ、怒られたことをいっそのこと相手のせいにしちゃうんです。

たとえばアイドルの人が、やりたくもないグラビア撮影をするとするじゃないですか。そこでポーズがうまくとれないからと言って怒られたとしても「このカメラマンの撮り方が下手なんだ」「変な要求ばっかりして、私の魅力を全然引き出せていないじゃないか」って思うんです。そうすると、まずは自分があまりダメージを食らわなくなりますよね。

それができたら、次は「相手が下手なんだから、私がちゃんとやってあげればいい」って、相手が喜びそうなポーズをとってあげるようにする。そうして少しでもいい仕事ができれば、自分の実績にもなりますし、何より成長につながります。誰かのせいにしつつ自分を成長させるっていうのは、ステップとしてすごく大事だと思っていますね。

僕たちは子どものころからよく「誰かのせいにするな」って教えられてきましたけど、それは違うなと思っています。なるべく誰かのせいにしたほうがいい。僕は小さい頃、学校でよくからかわれていて、それを全部受け止めて泣いちゃっているような子だったんです。でも、このままじゃだめだと思って、いつからか今のような思考に変わってきました。