サービスは「先手必勝」、なるべく早く名前を呼ぶべき理由

お客様のお名前がわかるとき、名前を添えてお声がけすることはCAの常識です。

搭乗前の機内では、各自が割り振られた担当エリアで、サービスに必要なものをテキパキと準備します。猫の手を借りたくなるほど忙しい時間帯です。

ただ、どんなに忙しくても、担当するお客様のお名前は急いで暗記します。搭乗までの限られた時間なので完璧には覚えられませんが、地上スタッフから直前に手渡されたネームリストを、意識して頭に入れます。

このバイネームに関して、私には強いこだわりがありました。

たとえば、「17 Aの田中様」と記された搭乗券を持ったお客様がお乗りになったら、必ず自分から「田中様ですね。いつもご搭乗ありがとうございます」と笑顔でご挨拶をしました。

飛行機の機内で笑顔で働く客室乗務員
写真=iStock.com/Anchiy
※写真はイメージです

サービスは「先手必勝」。お名前はなるべく早く、こちらから呼びかけてこそ意味があります。なぜならば、先に挨拶するという行動は「謙虚さ」を表し、「あなたとコミュニケーションをとりたい」という意思表示でもあるからです。

先手必勝という言葉は将棋や囲碁から生まれた言葉ですが、相手より先に攻撃すると有利になるという意味合いがあります。

サービスは、サービスパーソンから行動を起こせば「気遣い・心配り」になりますが、後手に回りお客様から声をかけられたならば、それは「お客様への配慮が足りていない」ということになってしまうのです。

また、地上スタッフと連絡を取るために、必ず誰か1人は、すべてのお客様の搭乗が終わるまで入口に立っている必要があります。

その際に、担当のお客様が搭乗されたら「17 Aの田中様です。ご案内お願いします」と必ずお名前を添えて、ほかのCAにご案内をお願いしていました。

「お客様のご案内をお願いします」でも伝わりますが、それだとお客様は、ご自分のことを大切にされているようには感じないのではないでしょうか。

老舗旅館や一流ホテルのスタッフの方が、意識的に名前を呼んでくださるように、お客様へ歓迎の気持ちを伝えるにはバイネームが効果的なのです。