日本に多い「プレイング・マネージャー」の問題点

日本の企業に多い管理職は、プレイング・マネージャーです。2019年のリクルートワークス研究所による調査では、管理職の約9割(87.3%)がプレイング・マネージャーであり、そのうち約3割が仕事時間の50%以上をプレイング業務に割いていると答えています。

プレイヤーでありながら、チームのマネジメントをする──これが問題を複雑にしています。

スポーツを見れば、名プレイヤーが名監督になれるわけではなく、プレイヤーと監督は別の能力であることがよくわかります。仕事も同じです。プレイヤーとして優秀な人が、自動的にマネージャーになれるわけではありません。本当は、プレイヤーとして優秀ならプレイヤーとして活躍し、マネージャーとして優秀ならマネージャー業務に専念するほうがいいのです。

しかし、日本の企業では、単一のキャリアパスで「管理職になると給与が上がる」のが普通です。ですから、優秀なプレイヤーを課長に昇進させよう、部長に昇進させようとなります。

高度経済成長の頃は、それで問題ありませんでした。普通にやっていれば右肩上がりに成長できたので、プレイング・マネージャーがマネジメントをほぼしなくてもかまわなかったのです。ところが、今はそうではありません。どうすればチームが成長できるのか、しっかり考える必要があります。

怒る上司と頭を抱える部下
写真=iStock.com/JackF
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教育なくして「いいマネージャー」にはなれない

僕は、全員がマネージャーになる必要はないと思っています。プレイヤーがスペシャリストとして昇格・昇進していく道もある、複線的なキャリアパスを設計すればいいのです。

○マネージャー=組織や人を通して会社に価値貢献する人
○スペシャリスト、エキスパート=専門性や知識を通して会社に価値貢献する人

たとえば、成績優秀な営業職の人が、マネージャーとなって部下を育て、チーム全体の営業力を上げる方向にいくのではなく、営業職スペシャリストとして活躍できるようにします。マネージャーとスペシャリストに優劣はありません。それぞれの会社に合わせて、柔軟に設計すればいいと思います。

少なくとも、全員がマネージャーになっていくのであれば、その際にマネージャーとしての教育が必要です。マネジメントの考え方、マネージャーとして何を求めているのかといったことを、会社としてしっかり伝えなければなりません。