なぜ雲散霧消することなく40回も続いたのか

――週末をまたいで4日後の3月2日にはJリーグとNPBで記者会見を開いています。

【村井】もうドタバタの中でのスタートですよね。ただこの時、こだわったのは連絡会議の「座組み」です。何としても専門家の力が必要だと思いましたし、JリーグとNPBだけの内輪の話し合いにしたくもありませんでした。NPB側からのアドバイスをもとに、感染症の専門家である東北大学名誉教授の賀来満夫先生に座長をお願いし、他に2人の先生に加わってもらって専門家チームを作りました。疫学、統計調査の専門家や地域アドバイザーの先生がたにも参加してもらいました。

この専門家チームのアドバイスを指針にJリーグ、プロ野球双方で知見を共有し、それぞれが対策を決めるスタイルにしたことが、会が雲散霧消せず40回も続いた理由だと思います。

オンラインとはいえ、これだけの人たちを2週間に1回集めるというのもなかなかのチャレンジでした。JリーグとNPBが持ち回りで議長をやり、朝9時から1時間が事務局の打ち合わせ、10時から本会議、11時半から記者会見という取り決めをして、結局これを40回続けました。2週間で「P(計画)D(実行)M(失敗)C(チェック)A(修正)」のサイクルを回すわけです。

感染予防から情報開示、トレーニングのやり方まで

【村井】もう一つ拘ったのは、決まったことをプロセスも含めて逐一、世間に発表することです。大きなことを決めていなくても2週間に一度、必ず記者会見を開く。そうすることで連絡会議が天日干しになりますし、専門家の知見を社会と共有できます。

われわれはJリーグのため、NPBのためにこの連絡会議をやっていたわけではなく、コロナ対策という世の中の大きな関心事について、われわれがハブになって成果を社会に還元する。そうすると社会のほうから「もっとこういうことを知りたい」というフィードバックがあり、それをわれわれが専門家と議論して結果をお返しする。そういうサイクルになっていきました。

――連絡会議では、具体的にどんなことが決まっていったのですか。

【村井】まず、選手やチームを感染から守るための「感染予防と対処」について詳細にとりまとめています。また感染者が出たときの「情報開示」のあり方、実際の感染状況に応じた「クラブの活動段階と定期検査」について。また自宅での個人トレーニングから集団トレーニングまでを8段階に分けた「サッカートレーニング」の詳細も議論しています。

また試合における「チームの移動、宿泊」のあり方、「無観客での試合開催」はどのような状況か、「制限付き試合開催」の内容も詳細に議論しています。2021年には、オンサイトの検査方式を決めました。いずれも、ガイドラインにまとめ逐一公開してきました。