②自治体の少子化対策は格差拡大につながる
2つ目の問題は、「都知事の政策が自治体間の少子化対策の格差を拡大させる呼び水になるのではないか」という点です。
小池都知事の政策は多くのメディアに取り上げられたこともあり、インパクトも大きく、他の自治体も参考にすると予想されます。
ただ、今回の少子化対策は東京都が豊かな財政状況にあるために実施できるものであり、同様の政策を実施できる自治体は限られてくるでしょう。この結果、財政に余裕のある自治体とそうでない自治体との間で、少子化対策の格差がさらに拡大してしまう恐れがあります。
また、お金のある自治体がインパクトのある少子化対策を行い、それが若い夫婦を引きつけ、そこに人が集まってくる可能性があります。これが特定の都市部に人を集めてしまい、自治体間の格差をさらに拡大させる恐れがあります。
人口減少に悩む多くの自治体にとって、これは無視できない問題です。
このような自治体間の格差を改善するには、国による支援策が重要となってきます。しかし、実際のところ国の少子化対策は必ずしも十分とは言えません。多くの人々が求める少子化対策と実際の対策の間にはギャップが存在しています。これが3つ目の問題です。
③国の少子化対策の理想と現実のギャップ
国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」が示すように、既婚者が子どもを持つことを控える最も大きな理由は、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」です。このため、素直に考えれば、子育て世帯の経済的な負担の軽減が望ましい政策の1つです。
子育ては長期にわたるため、一時的な経済支援ではなく、長期にわたる支援が求められます。この点に関する最適な政策は、義務教育以降の教育費の無償化であり、2020年4月から「私立高校授業料実質無償化」および「高等教育(大学・短大・高等専門学校、専門学校等)の無償化」が実施されています。
しかし、これらの教育費無償化政策には所得制限が設けられており、すべての人々が利用できる制度とはなっていません。高等教育の無償化に関しては、住民税非課税世帯またはそれに準ずる世帯で利用可能となっており、対象は限定的です。
「子どもにかかる教育費がもっと少なければ、もう一人子どもが持てるのに……」と考える夫婦がいることは想像に難くありません。しかし、現在の政策はその望みを叶える形になっていません。
このように、人々が求める政策と実際の政策の間にはギャップがあります。このギャップが生まれる背景には、次の2つの理由があると考えられます。