仕事でつながった関係を深める「連立方程式」

社会人であるからには、まずは仕事としっかりと向き合っているかどうかが基本だと考えます。それができない人は、人間関係に関してもしっかり向き合える人かどうか怪しいものです。

社会人だからといって利害を超えた関係は築けないと決めつけるべきではないというのが、私の実体験からの結論です。

極端な話、社内恋愛で結婚するというのは、本来仕事を通じての利害関係であったものから、深い人間関係に到達した典型的な例でしょう。結婚でなくとも、仕事を通じて知り合った人が、一生の付き合いになることもあります。

そういうことを前提にして、仕事で良好な人間関係、深い人間関係を築くには、上手に「連立方程式」を作ることができるかにかかっていると思います。

テイク&テイクでは絶対によい関係は築けません。例えばここにオレンジが一個あるとしましょう。相手は実を食べたいと思っている。自分も実を食べようと思ったら奪い合いになるかもしれません。

そこで自分はマーマレードの作り方を知っているから、実の方は相手にあげて、自分は皮をもらってマーマレードを作ることにする。こういう形でお互いが、ある条件の下でプラスになるための連立方程式を作ることが大事になります。

これが上手にできる人が、大人の友情を育むことができる人です。利害から始まった関係が次第に変質して、より深い一歩先の関係へとつながっていくのです。

湾曲ディスプレーに映し出されたスクリプト
写真=iStock.com/monsitj
※写真はイメージです

Facebookの友達が1000人でも仕事的には意味がない

次に大事になるのが、人脈をいかに維持し、よりつながりを深めていくかということ。つまり人脈のメンテナンスということになります。

まず大事なことは人脈を重要度で仕分けするということ。

全員と同じように付き合うということは物理的に不可能です。当然、付き合い方の濃淡が出てきます。

重要な人物かどうかをどう判断するべきでしょうか? 会社や組織の中で意思決定ができる人かどうかで仕分けるのも一つの方法でしょう。

組織の中で意思決定ができるとなると、やはり役員クラスということになりますが、なかなかすぐにはそういう人と付き合うことは難しいと思います。ならばワンクッション、あるいはツークッションで意思決定にアクセスできる人とつながるようにするのです。

本部長や部長、あるいは組織によっては課長クラスが力を持っている場合もあります。意思決定に近い人を重要度の基準にすることです。

認知心理学では、一生の間で本当に深く関われる人は30人だと言われています。どうやら認知心理学的に、その能力としての限界がその数字らしい。ですから人脈においても深い関係になるのは30人が限度だということです。

それを考え合わせると、そこまで関係性が深くない人も含めて仕事で実際に付き合える有効な人脈は、どんなに多くても100人が限度だと私は考えています。

ですからFacebookで友達が何百人、何千人いるからといって、ほとんど仕事的には意味のないものだと考えていいでしょう。むしろいろいろな雑音が入ってきたり、面倒なことが起きたり、マイナスになることの方が多いように思います。