多くの大企業には有名大学出身者の同窓会組織が存在している。コラムニストの小田嶋隆さんは「私が卒業した早稲田大学には『稲門会』と呼ばれる同窓会組織がある。私が新卒で入社した会社にも稲門会が存在しており、社内の最大学閥になっていた。学閥は理想的な情報網であり、出世のパスポートとして機能していた」という――。

※本稿は、小田嶋隆『小田嶋隆の学歴論』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

早稲田大学大隈講堂
早稲田大学大隈講堂(写真=Arabrity/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

意外と知られていない早稲田大学の同窓会組織

稲門会は「とうもんかい」と読む。農業関係の団体ではない。早稲田大学出身者による同窓会組織である。

ちなみに「稲門会」というその名称は、稲穂をシンボライズした早稲田の校章に由来している。全国には公式、非公式を含めて無数の稲門会が存在している。が、一般の人々の間では、その存在は、意外なほど知られていない。というのも、稲門会は一種の秘密結社だからだ。

いや、アオるのはよそう。稲門会とて、別に後ろ暗い意図で組織された反社会的な団体というわけではない。関係者はきっと「われわれは開かれた組織だ」(そもそも早稲田大学出身者しか入会できないのに、「開かれた」もへったくれもないわけだけど)ぐらいに思っているのだろうし、あんまりはじめからフリーメーソン扱いにするのもおとなげない。

実際、稲門会の会合は、たいていの場合、早稲田大学に通った人々が、昔を懐かしんだり、近況を報告し合うだけのものだ。その意味では、オヤジの感傷以上のものではない。また、この種の同門による親睦組織は、なにも早稲田大学出身者だけが作っているわけのものでもない。

慶應大学には「三田会」があるし、そのほか、上智大学や立教大学にも似たような組織がある。要するに、学校があれば必ず同窓会組織があるということで、稲門会もまた、世間にあまたある親睦団体のひとつに過ぎないと言ってしまえば、そう言えないこともないのだ。とはいえ、「稲門会」は、外部の者にわかりにくい名称を冠していることでも想像される通り、なかなか油断のならない結社なのである。