実利よりも「価値創造への熱意」を尊重する
「かなり辛抱させられました。(事業を立ち上げて伸ばすには)予想したよりも投資も資金もかかりました」。辛抱を示すにあたり、リーダーたちは単に手をこまねいて、売上が増えるのを待っていたわけではない。「『どうすればもっと売上を出せるのか』と自問しましたよ。激しい議論をして、この事業を伸ばす方法を論じました」
商業的論理を強く推進する一方で、リクルート社はスタディサプリの社会的インパクトについて極度の配慮を示し、経済的論理が実体化するまでに異様なほどの忍耐を示した。池内も認める通り、リクルート社の重役でスタディサプリの創業者である山口文洋が、この事業と見通しについて実に熱意を感じていたこと、そしてリクルート社が従業員の熱意と起業家的情熱の育成と活用に向けた文化を持っていたことも、その一因だった。
だが最終的にリクルート社は、短期的にはあまり儲からないが、潜在的には長期的に収益性を持ち、明らかな社会的価値を提供するビジネスに賭けた。これは同社がそのパーパスに異常なほど強いコミットメントを示していたからだ。池内が指摘するように、「私たちは社会的価値を最重視します。1988年スキャンダルからの教訓を学び、私たちは中核価値を更新し続け、ビジネスがそれを体現するようにしているのです」。