「最終的にどう使うのか」というイメージを確立せよ
現在、公開情報は充実しており、誰もが安全に利用できる。しかし、公開情報は他の情報源と異なり、受動的に入ってくるので、疑わしい情報が多いし、情報収集の目的を失いやすい。すなわち、目的を明確にしないで、ただ情報を集めることに没頭するという“愚”を犯しかねないのだ。
情報には使用目的がある。どのような意思決定に使用するのかという目的を、自分なりに明確にしておくことが大切だ。つまり情報を、「最終的にどう使うのか」というイメージを確立させよということだ。
また、情報から価値あるインテリジェンスを得るには、異なる情報と照らし合わせそこで情報の疑問点や齟齬をなくすことが重要である。
他の情報とつき合わせることで、情報の正確さを確認できる。結び合わせることで、モレのない情報が出来上がる。
特に玉石混淆の公開情報では、相手側の分析、推測、解釈、意見が混入しているので、しっかりと分別する必要がある。
たとえば、新聞記事は推測を事実のように記述したり、記者の思想に読者を誘導するような仕込み記事が書かれることもある。ビジネスパーソンもよくよく注意してほしい。
公開情報といえども、しっかりと分析して磨き上げれば、価値のあるインテリジェンスとなる。
公開情報の組み合わせで「ダイヤモンド」になる
このことをあなたに理解していただくために、次の話を紹介しよう。第二次世界大戦前の1935年頃の話。
ヒトラーは、ドイツ情報機関のトップであるニコライ大佐を呼びつけて叱責した。
当時、ナチスから追放され、ロンドンに亡命中のドイツ人医師ヤコブが書いたドイツ軍に関する小説の中で、軍事組織の詳細が明らかになってしまったからだ。
ヒトラーは、ドイツ軍の何者かがヤコブに情報を漏洩したと考えて、ニコライ大佐に調査を命じた。
情報機関はヤコブをスイスに連れ出し、そこで誘拐しようと試みた。
ニコライ大佐は配下に命じて、スイスに出版社を開かせた。情報機関がこしらえた出版社は、ヤコブに「先生の本を出版したいので、旅行もかねて夫婦同伴でスイスに来られたし」という手紙を送った。
スイスにやってきたヤコブは、商談目的ということでレストランでもてなされ、そこで睡眠薬を盛られて、鉄道でドイツに連れ出された。
そして、ドイツ調査委員会によってヤコブは尋問された。しかし、彼は「すべての情報はドイツの新聞から得たものだ」とし、スパイ容疑を否認した。
実は、彼はドイツ軍人の結婚式や葬儀の出席者を丹念に調査し、ここからドイツ軍の指揮官名や編成組織を解明したのであった。
インターネット上にはインテリジェンスの原石が山のように眠っている。分析術を鍛え、他の情報と組み合わせれば、公開情報からダイヤモンドのようなインテリジェンスを手にすることができるのだ。
ただし、繰り返すが、「情報の氾濫」に巻き込まれないように目的意識を持つことを絶対に忘れてはならない。