自己コントロール能力が人生を左右する

そして1980年代になると、自尊心よりも、自己調整(セルフ・コントロール)に多くの学者が目を向けるようになりました。

2010年、アメリカの著名な臨床心理士、テリー・エディス・モフィットがニュージーランドで始めた約1000人の子供を誕生から32歳まで追跡するという大規模な調査があります。

それによれば、自己コントロール能力が高かった子供は、成人してからの肥満率が低く、性感染症を持つ人も少なく、歯の状態もよいといった身体的な健康状態が良いことが確認できただけでなく、大人になってからも安定した結婚生活を営み、両親が揃った家庭で子供を育てる傾向が見られました。

一方で、自己コントロール能力が低かった子供は、アルコールや薬物の問題を抱えやすく、大人になってから経済的に貧しくなる傾向にあり、子供をひとり親家庭で育てる割合、刑務所に入る割合も高かったといいます。

家の廊下に一人で座る悲しい少年
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

多くの人を悩ます自己肯定感のジレンマ

腰が痛いとき、湿布を貼るのは対症療法です。

腰痛の根本原因には、生活習慣のみならず、心理的要因や、内臓疾患が潜んでいる可能性があります。湿布を貼ることによって、一時的に痛みが和らぐことはあっても、腰痛の根本原因が解消されることはありません。

このように、症状の根本ではなく、表面の症状に対処しようとする療法を対症療法と呼びます。

自分を否定し続けて苦しむよりも、自己肯定感を高めて「ありのままの自分を認める、受け入れる」ことが出来れば、確かに一時期心が和らぐことでしょう。

けれども、実際には、そこから自己肯定感を高めようとして、それができないことに悩んでしまう人が少なくありません。

今から2600年前のインドに、このジレンマに対する根本療法を発見した人がいました。ブッダです。