国民性を無視した調査結果が見せる“虚像”

けれども、こうした意識調査結果というのは、国民性がよくあらわれるものだということを忘れてはなりません。

「自分に自信があるか」とか「自分自身に満足しているか」などと質問をされたとき、多くの日本人は、例え自信があっても、「自信ある!」とは言わないし、不満がなくとも「満足している!」とは言いません。

謙虚さが美徳とされている日本では、自分のことを高く、大きく表現することを恥ずかしがる人が多いからです。

そもそも、どの国にも、自分を肯定的に捉える人もいるし、否定的に捉える人もいる。例えこのアンケート調査で「自分に満足している」と回答した人でも、その後大失恋をしたり、車で人をはねて交通事故を起こしてしまったりすれば、自己評価など大きく下がってしまいます。

よく聞く、「幸福度ランキング○○位」などという類いも同じです。

にもかかわらず、こうしたあまり意味があるとは思えない調査結果が発表され、これを鵜呑みにしたマスコミが、「日本人は自己肯定感が低い」などと喧伝することで、本当にそうだと思い込んでしまう人が多いのです。

「自己肯定感が低いと生きづらい」は本当か

理由②パフォーマンスと「自己肯定感」の高い低いとは、関係ない

しばしば「自己肯定感が低いと生きづらい」とか、「自己肯定感さえ高めれば、人生はうまくいく」といった表現が、自己肯定感を売りにしている人によってなされますが、実はこれには、あまり根拠がありません。

自尊心研究の先駆けであり、第一人者とされたロイ・バウマイスターによれば、アメリカでは彼が研究を始めた1970年代から、つまり日本で「自己○○感」がブームになるよりずっと以前から、自尊心の研究が盛んに行われていたといいます。

自分の能力と価値観に自信がある人ほど幸福になって成功するという研究があったためです。

しかしその後、アメリカの科学的な研究機関である心理科学協会で、それまでにあった何千という研究の中から、高い研究水準を満たすものだけを選び出して研究を行った結果、自尊心の高さと飲酒、喫煙、薬物、未成年の性行為、学業成績などは、あまり関係がないことが分かったのです。